馬あぐり『純情乙男マコちゃん』

 

 

純情乙男マコちゃん

 

作者:馬あぐり

掲載サイト:『Hugピクシブ』(ピクシブ)2017年‐

単行本:リラクトコミックス(フロンティアワークス)

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主人公は24歳の「鎌田まこと」。

男だがかわいいものが好き。

子供服のデザイナーになりたくアパレル企業に就職したのに、

趣味とかけ離れたセクシー系ブランドでディストリビューターをつとめる。

女らしさのかけらもない先輩にイビられる毎日だ。

 

 

 

 

たまったストレスは仕事帰りに発散する。

鎌田の趣味は女装。

男子トイレでロリータファッションに着替え、美少女「マコちゃん」に変身する。

 

 

 

 

マコちゃんの出没先はライブハウス。

とあるバンドのベーシストを熱心に追いかけている。

「女装バンギャ」とゆう珍しい題材をあつかう作品だ。

 

 

 

 

本作は、馬あぐりの初連載で初単行本。

画力が高く、描き分けは男女ともにうまいし、また世界観の面でも、

アパレル業界やライブハウスなどをリアルに表現している。

さらに、追っかけられる「ダイちゃん」側の事情をコミカルに描くあたり、

ギャグも得意とするオールラウンドプレイヤーである様だ。

 

 

 

 

マコは幼いころから、かわいい女子に憧れていた。

なのでメンズファッションにとことん疎い。

「あたしのブランドの価値を下げるな」と、デザイナーの「リカ」になじられる。

 

主人公に共感できるし、脇役もキャラが立っている。

力のある作家なのはまちがいない。

 

 

 

 

以上のレビューを読むと、マコの恋愛観を知りたくなるのではないか。

つまり、この主人公は性的に男が好きなのかどうか。

1巻時点では、はっきりしない。

新人にありがちな、好物を詰めこんで曖昧化したプロットなのは否定できない。

 

だがそれでもマコが、性別とか性愛とか関係なく、

ひたすら可愛さを追求するとゆう、自身の哲学をかたる場面は感動的。





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『三ツ星カラーズ』 リーダー大勝利!

 

 

三ツ星カラーズ

 

監督:河村智之

原作:カツヲ

シリーズ構成:ヤスカワショウゴ

キャラクターデザイン:横田拓己

音楽:未知瑠

アニメーション制作:SILVER LINK.

放送期間:2018年1月‐

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カラーズの三人はOPで、それぞれ13着の衣装を着る。

結衣は赤で、リボンやフリルがついた可愛い系。

さっちゃんは黄で、キュロットなどのボーイッシュ系。

琴葉は青で、帽子やワンピを好むクール系。

 

39着のデザインをおこす作業を想像すると、気が遠くなる。

 

 

 

 

第6話でカラーズは、人類が滅びたあとでも生き残れるよう、

食べられる雑草をもとめ上野公園をさがしまわる。

細密に描かれた背景が見どころだ。

 

 

 

 

本作の主人公は結衣となっているが、パワーバランスは押されぎみ。

天衣無縫で傍若無人なさっちゃんと、

3DSを手にしながら毒舌と暴力をくりだす琴葉が相手では、

どうしても結衣の優等生キャラは見劣りする。

 

 

 

 

6話のハイライトは「弱点探し会議」。

メンバーがおたがいの弱点を指摘しあうことを通じて、

暇つぶし……じゃなかった、成長の糧とする。

 

琴葉の弱点の番になった。

らしくもなく、さっちゃんが遠慮しており、不穏な空気に。

言ってはいけない弱点があるらしい。

 

 

 

 

それは、実は琴葉はゲームが下手なこと。

いつもゲームばっかりやってるのに。

しかも下手である自覚がない。

 

 

 

 

天使の笑顔で、まるで悪意なく、友人のプライドを粉砕する。

結衣は、1クールの折り返し地点となる6話で、

本作がだれの物語なのかをはっきりさせた。

 

 

 

 

6話の演出は、ベテランの川畑えるきん

『この美術部には問題がある!』『ガヴリールドロップアウト』など、

電撃コミックスが原作のアニメは質が高い印象がある。

なぜかは見当もつかない。

むしろおしえてほしい。

 

僕にできるのは、「アニメ化」とゆう過小評価されがちな、

ひとつのクリエイティビティを、ひたすらたのしむことだけ。





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『群狼のプリンセス』 第10章「品川埠頭」


登場人物・あらすじ(準備中)


全篇を読む(準備中)






 ダークブルーの十人乗りのトヨタ・ハイエースが、品川コンテナ埠頭に駐まる。一番隊がファミリーマートの駐車場に降りる。潮の匂いが鼻孔にながれこむ。

 ジュンの指示にしたがい、隊員はコンビニの棚を外へ出す。即席のバリケードだ。ミカがこっそりチョコレートをくすねるのを見つけ、ジュンは尻を蹴飛ばす。

 警視庁の特型警備車が二台、立て続けに到着する。装甲が青と白に塗装されている。ヘルメットをかぶった三十名のSAT隊員が降り立つ。サブマシンガンのMP5を装備している。ファミマに長机と椅子をもちこみ、ノートPCや無線機や地図などを設置する。コンビニはなんでも揃う。立派な前線基地となった。

 陸自の林も、一番隊にまじって荷物をはこぶ。

 ジュンが林に言う。

「雑用はウチがやりますから」

 林が答える。「俺はじっとしてるのが嫌いなんだ」

「じゃあお願いします」

「あと自衛隊では、これを雑用と言わない。ただしくは後方支援だ」

 一番隊は戦闘に参加しない。敵は火器を装備すると予測されるからだ。ただし武装解除後は、現場に呼ばれるかもしれない。

 ガラス越しにジュンは、防弾ベストを着こんだSAT隊員に目をとめる。こちらへ向かってくる。MP5のストックが伸びている。セレクターはフルオートに入ってる様にみえる。ヘルメットはバイザーが下りており、表情がわからない。

 ジュンの鼓動が速まる。

 直感が敵だと告げる。味方に警告すべきだ。でも間違いだったら、大恥をかく。

 かまわない。損するわけじゃない。

 ジュンが叫ぶ。「敵襲! 伏せろッ!」

 ズダダダダダッ!

 SAT隊員が九ミリ弾を連射する。すぐ三十発を撃ち尽くし、コッキングレバーを引いて弾倉を交換する。交換中も歩行を止めない。ふたたび発砲する。

 ズダダダダダッ!

 ガラスの雨が降り注ぐ。ジュンは床を這いつつ、店内を見回す。豆鉄砲をくらった鳩の様だが、一番隊に負傷者はいなさそうだ。ガラス片が脛と膝に刺さったジュン以外。

 林が拳銃のSIG220を抜いている。マガジンラックの陰から応射する。遮蔽物を利用せず、仁王立ちのSAT隊員が斃れる。

 まだ銃声は止まない。数十メートル先で、SATと般若党が交戦開始した。

 SAT指揮官であるくせっ毛の警部は、椅子から転げ落ち、リノリウムの床で硬直している。

 スパイが潜んでいた以上、こちらの情報は筒抜けにちがいない。SAT隊員は身辺調査を経て選抜されるから、信じがたい事態だ。

 今回の強襲作戦は、二手に分かれて挟撃するシンプルなもの。別の三十名からなるBチームが、敵の背後をとるため迂回した。いまごろあちらも、待ち伏せ攻撃を受けてると想像される。

 ジュンは腰を上げる。座ってブツブツつぶやく、ヲタの手を引いて立たせる。

 はやく陣容を立て直したい。下手したら、ウチらまで包囲される。

 ドリンクが陳列する冷蔵庫の方から、男が泣きわめく声が聞こえる。チャラ男が寝転がり、もがいている。端正な顔が吐瀉物で汚れている。

 ジュンはチャラ男の花柄のシャツをつかみ、強引に立たせる。冷蔵庫のガラス扉にへ押しつける。銀のピアスがゆれる。

 チャラ男が叫ぶ。「ひいっ!」

 怯えるのは当然だ。警備員の業務に銃撃戦はふくまれない。クビにしておくのがチャラ男のためだった。無理させたら、あとでPTSDが発症する恐れもある。

 でも放置はできない。

「チャラ男!」ジュンが叫ぶ。「こんなとこで泣いてる場合か!」

「ママ! ママ!」

 ジュンは頬を平手打ちする。

「うるせえ! ママは助けてくんねえよ!」

「ママーッ!」

「お前はなんのためアカツキに入ったんだ。軟弱な自分を変えたいんじゃないのか」

「いやだ。俺は家に帰る」

「無事に帰るためにしっかりしろ。男らしさを見せろ。そしたらあたしが彼女になってやる」

「ブタゴリラとは死んでもつきあわない」

「そうゆうときだけ強気だな」




 バリンッ!

 出入口でガラスの割れる音がする。SAT隊員がMP5のストックで、故障した自動ドアを破っている。ヘルメットに弾痕がある。

 カーリーヘアの指揮官はまだ、弁当売り場でうづくまる。部下であるSAT隊員が駆け寄る。

 無線機の受話器を突きつけ、SAT隊員がカーリーヘアに言う。

「われわれは立ち往生してます。御命令を!」

 カーリーが叫ぶ。「Bチームはどうした!?」

「わかりません」

「無線でBチームを呼び出せ。敵の後背を突けと指示しろ」

「すでに彼らはそうしてます。それより、われわれはどうするんですか」

「はやくBチームを呼び出せ!」

 ジュンは、ピンクのニューバランスでガラスの破片を踏みしめ、店外へ飛び出そうとする。チャンコに腕をつかまれる。日野に教わった体捌きで振りほどく。

 銃弾に身を晒すのは怖い。でも、周囲の状況がわからないままでいる方が、もっと怖い。

 ジュンは特型警備車の陰から、通りの様子をうかがう。SAT隊員が三名倒れている。手当てする者はいない。死亡したのかもしれない。のこりの二十数名が応戦するが、火力で押されて劣勢だ。

 ジュンは、クリップ式望遠鏡を装着したアイフォンで観察する。般若党が、ネゲヴ軽機関銃でライフル弾をばら撒く。IWI社製の分隊支援火器だ。サブマシンガンで対抗せざるをえないSAT隊員は、単なる射撃訓練の的だ。

 数百メートル先で爆発音が轟く。敵が迫撃砲かなにかを使用してるらしい。

 般若党は、全国各地のアマゾンの無人倉庫をアジトにしている様だ。重火器を入手できるなら、ほかにも違法な物資を密輸入してるだろう。

 どうやらあたしは糞壺にはまった。

 ジュンは肩を落とし、ファミリーマートへ戻る。部下をつれて逃げることしか考えてない。警察と心中する気はない。

 林が、うづくまるカーリーを睨みつける。毛穴から血が吹き出そうなほど紅潮している。自分が指揮を取りたいのだろう。しかしそれは重大な越権行為だ。憲法違反かもしれない。ハラキリ程度ではすまないトラブルをひきおこす。

 ジュンが林に言う。

「シロウト考えですが」

 林が答える。「なんだ」

「あそこのクレーンにスナイパーを置いたらどうでしょう」

 ジュンが指差す先に、コンテナの積み下ろしをおこなうガントリークレーンがある。高さは約五十メートル。吹きさらしの階段が機械室までつづく。ネゲヴの射手を排除できるし、腕のよい狙撃手ならBチームの支援も可能だ。

「名案だ」林が言う。「なぜだれも思いつかなかったのか」

 林は断りなく、SATの備品であるレミントンM24狙撃銃をつかむ。予備弾倉をジーンズのポケットに詰められるだけ詰めこむ。

 急にスイッチが入ったカーリーが起き上がる。

 カーリーが林に尋ねる。

「まさか、御自身が前線に出るんじゃないでしょうね」

 林が答える。「見なかったことにしてくれ」

「あなたはあくまでアドバイザーだ」

「私は元狙撃手だ。いまも訓練を欠かさない。適任だろう」

「自重してください。マスコミや野党が知ったら何と言うか」

 カチャ、カチャッ!

 林はボルトハンドルを操作し、・300ウィンチェスターマグナム弾を薬室へ送りこむ。両手でM24をもつ。五十歳前後だが、わりとサマになる。

「だまれ。それ以上の妄言は、利敵行為とみなす」

「一佐。あなたひとりの問題ではない」

「私はいまからクレーンへむかう。止めたいなら背中を撃て。貴官にできるとは思えないが」




 ファミマには、カーリーと一番隊の十名だけのこっている。カーリーの部下は隊長を見捨て、忽然と消えた。

 カーリーは、力づくで林を制止すべきだった。SATの指揮系統は崩壊した。作戦が成功しようがしまいが、カーリーは責任をとらされる。彼の近くにいて、部下にはなんの得もない。

 ジュンはトイレへ行くふりをしつつ、チャンコとヲタに目配せする。コピー機の置かれた小部屋で、ついて来たふたりに囁く。

「ネゲヴの連射音が聞こえなくなった。いまが逃げるチャンスだ」

 ヲタが答える。「やっとか。おせえよ」

「ハイエースは目立つから、ここに乗り捨てる」

「さすがに職務放棄はヤバいもんな」

「隊を三つに分ける。あたしがダンとミカをつれてく。あとの五人をまかせた。天王洲アイルで再集合」

「ルートは?」

「知らん」

「なんなら泳いで帰るか」

 ジュンは目眩に襲われる。ピルケースにある向精神薬のマーナガルムを、手のひらに全部のせる。十錠以上ある。冷えたレッドブルで流しこむ。

「おいおい」ヲタが言う。「飲みすぎだろ」

「お前が泳ぐとか言うから」

「ひょっとしてカナヅチか?」

「まあね」

「ははっ。お嬢にも怖いものがあるとは」

「昔は泳げたよ。けどママがプールで溺れてから、水が怖くなった。湯船にも入れない」

「……いつもすまん。口が悪くて」

「いいんだ。ヲタはあたしの参謀だから、厳しい意見は歓迎だ。たいてい従わないけどね」

「意外と考えてるんだな」

「中間管理職は気苦労ばかりさ」




 男ふたりの口論する声が、店内に反響する。

 M24を肩にかけた林が、カーリーを怒鳴りつける。その弱腰を批難し、前線で隊員を指揮しろと求める。カーリーは、Bチームがどうのこうのと反論する。埒があかない。

 林がどうと倒れる。長机や無線機が転がる。

 ジュンは林に駆け寄る。折りたたみナイフのブレードをロックする。林を仰向けにし、黒のギンガムチェックのシャツを切り裂く。左胸から大量出血している。

 ジュンが叫ぶ。「チャンコ、止血の用意!」

「ウッス」

 林がジュンの腕をつかむ。

「君らは民間人だ」林が言う。「すぐ撤退しろ」

 ジュンが答える。「わかってます。林さんの手当てをしたら逃げます」

「私は助からない。職業柄、ケガにくわしいんだ」

「しゃべらないで」

「十歳若ければ、こんなヘマはしなかった。テロリストを根絶やしにできたのに……」

 林はとめどなく話しつづける。譫妄状態だ。チャンコが、店の白いタオルを銃創に押しつける。一瞬で真っ赤に染まる。

 林が続ける。「……私は二十七年、国家に奉仕した」

「お願いだから安静にして」

「退官した者もふくめ、多くの部下を育てた。三人の子供にも恵まれた。人生になんの悔いもない。ただひとつをのぞいて」

「お願い」

「心配なのは日本の行く末だ。この国はどこかおかしい。タガが外れている。そう思わないか」

「思います」

「君の様な若者は生き延びてくれ。この国の狂気と戦ってくれ」

「わかりました。息子さんにも会います。結婚するかはともかく、林さんのことを伝えます」

「ありがとう。君は心のうつくしい人だ。私は希望をもって死ねる」

 林の呼吸が止まった。

 ジュンは立ち上がる。なめらかな頬が涙で濡れている。狼の様に唸り、わななく。

 ヲタが立ち塞がる。身長はほとんど変わらない。正面からジュンと目をあわせる。

 血に飢えた、壮絶な顔つきだ。

 食われる。

 ヲタは恐怖した。

 ジュンの性格は熟知している。林の自己犠牲に刺激されただけでなく、マーナガルムを過剰摂取している。単騎で突撃するつもりだ。体を張って止めるのが自分の義務だ。

 ジャキンッ!

 特殊警棒をジュンが振って伸ばした。

 つかみかかるヲタを、左のボディブローでノックアウトする。激戦がつづく通りへ飛び出す。

 のこされた隊員は呆然とする。血染めのタオルをにぎるチャンコに視線があつまる。

 チャンコが震えている。ひたすらジュンに忠実で、どんな任務も愚直に耐えてきた男なのに。

 用賀の立体駐車場で、たしかに一番隊は銃撃戦に巻きこまれた経験がある。でもあれは、こちらの奇襲攻撃だった。武装した敵も少数だった。いまジュンが向かったのは、本物の戦場だ。

 正気の沙汰じゃない。

 そこまで忠義立てしなきゃいけないのか。

 ジャキンッ!

 隊員たちは驚愕する。軟弱だとバカにしていたチャラ男が、特殊警棒を構える姿に。

 運命は決した。

 もう逃げられない。チャラ男より臆病だなんてレッテルを貼られたら終わりだ。

 ジャキジャキジャキジャキンッ!

 隊員たちが口々に叫ぶ。

「ウッス!」

「死んでやるよ! 死ねばいいんだろ!」

「あのブタゴリラ!」

「くそブラック企業!」

「パワハラ女!」

「畜生!」

「やってられるか!」

「ファック!」

「ダン、ウォッチ・ユア・マウス!」

 九人の隊員は、二十秒遅れでジュンを追った。




 三時間後。

 グレーの日産スカイラインが、都道三〇一号線を北上する。警視庁の車両だ。夕空を背景にそびえ立つ東京タワーがうつくしい。

 ジュンは後部座席にひとりで座る。額にガーゼがテープで留められている。ガリルの五・五六ミリ弾で負傷した。嫁入り前の顔を疵物にされて残念だが、むしろ幸運に感謝すべきなのだろう。

 目的地は永田町の総理大臣官邸。松平賢保首相じきじきの要望で呼びつけられた。

 品川埠頭での作戦終了後、ジュンは怒り狂った部下に取り囲まれ、散々苦情を言われた。無謀だのなんだのと。

 あいつらは全然わかってない。あたしには勝算があった。

 敵はまったく予想しなかったはず。しばらく互角の銃撃戦をくりひろげたあと、棒を振りかざした集団が突進してくるなんて。実際、般若党による発砲はほとんどなかった。一番隊の行動を、咄嗟に理解できなかったのだ。

 そう説明しても、結果論だとか言われ、火に油ををそそぐだけだった。

 あたしだって戦略にもとづいて行動してるのに、だれにも認められないのが悲しい。

 まあ、もう一回やれと言われたら、絶対やらないけど。

 政治家に会うなんて億劫だが、部下による吊し上げから逃れるため承諾した。それに、首相に直接頼みたい用件がひとつある。




 スカイラインが官邸に到着した。全面ガラス張りの正面玄関で、女性警務官によるボディチェックをうける。乾いた血がこびりついた特殊警棒に、警務官が目をとめる。

 上目遣いで警務官が言う。

「あのう、その警棒を……」

 ジュンが答える。「この警棒がなにか?」

「……いえ、結構です」

 五階の総理執務室へ通される。緊張はしない。銃弾の嵐へ飛びこむのとくらべたら、物の数ではない。

 執務室の内装は質素だった。なんて言うか、昭和のセンスだ。読めない漢字の書が、額に飾られている。大五郎はかつて、ジュンを総理大臣にする計画があると語っていた。つまりジュンは、この部屋の主になる可能性がある。

 もしあたしが総理大臣になったら、もっとオシャレな部屋に模様替えしよう。別に、そんなものになりたいとは思わないが。

 顔色の悪い、極端にやせ細った男がデスクにむかい座っている。ジュンを見て不審げな表情をうかべる。首相の松平賢保だ。まだ四十四歳と若い。マスクをしており、ときおり咳きこんでいる。

 眉をひそめ、松平が尋ねる。

「君は?」

「暁ジュンです。案内されてお邪魔しました」

「申し訳ないが、私はいまから人に会う予定だ。般若党との戦いで活躍したヒーローに」

「それは多分あたしです。アカツキセキリティ一番隊の隊長をつとめてます」

「ふふっ」

「いや、本当に」

「銃をもたずにテロリストを蹴散らした猛者と聞いてるぞ」

「大袈裟ですよ。最後においしいところを持ってっただけです。一番奮闘したのはSATです」

 松平はよろよろ立ち上がる。咳をしながら、ドアのそばのジュンへ歩み寄る。目が潤んでいる。

「もしかして、君が暁さんか」

「ええ。さっきから言ってますけど」

「なんてことだ。わが政府は、君みたいな可憐な少女に、危険な真似をさせたのか」

「仕事ですから。可憐なのは否定しませんが」

「許してくれ! リーダーである私が、安全な場所でのうのうとしていたことを!」

 松平はひざまづき、傷だらけのジュンの両手をとる。はげしく嗚咽をもらす。

 ジュンは苦笑いする。

 またオジサンにモテてしまった。同世代のイケメンには可愛いと言ってもらえないのに。

「約束しよう」松平が続ける。「次からは私も現場に出ると」

「むしろ迷惑じゃないですかね」

「そうゆうものか」

「それより、首相にお願いがあります」

「なんでも言ってくれ」

「殉職された陸上自衛隊の林一佐のことです」

 だらしなく泣いていた松平の表情が一変する。冷徹な政治家の顔だ。

「その情報は知らないことはない。しかし、建前上は知らない」

「公にできないのはわかります。でも一佐は名誉を重んじる方でした。一佐や御遺族への配慮を忘れないでいただけると」

「そこまで考えが及ばなかった。秘書官に伝える」

「ありがとうございます」

「こちらこそ礼を言わねばならない」

 松平は電話で秘書官を部屋に呼び、言伝てする。秘書官が耳打ちする。忙しそうだ。

 ハンカチで顔を拭きつつ、松平が言う。

「十分後、一階で記者会見をおこなう」

「そうですか」

「よかったら、暁さんも出席してくれないか」

「えっ」

「政治利用する様で、正直心苦しい。でも国民はヒーローをもとめている。彼らを勇気づけたい」

 ジュンはボサボサの頭を掻く。

 目立つのは嫌いじゃない。でもさすがのあたしも、すっぴんでテレビに出るのはキツい。

 パパだったらどう答えるだろう。

「わかりました。出ます」

「本当か! ありがとう!」

「晴れの舞台に立つのは、父の夢でもあるので」

 ジュンは微笑しながらつぶやく。

 パパ。

 一秒もはやく、あなたに会いたい。

 いつもあたしを褒めてくれるパパ。きょうあたしは頑張ったから、いっぱいわがままを聞いてくれるだろう。いっぱい甘えさせてくれるだろう。




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ジャンル : 小説・文学

ハトポポコ『みなクズ with 男子校系男子』

 

 

みなクズ with 男子校系男子

 

作者:ハトポポコ

発行:KADOKAWA 2018年

レーベル:電撃コミックスEX

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なんだかんだでハトポポコは社会派だとおもう。

単に奇を衒ったシュールギャグを提示するだけでなく、

シンプルな絵柄のむこうで、現実的問題が蠢いている。

 

 

 

 

『みなクズ』のテーマは「クズ」である。

JKたちは何がクズかを理解し、自分の内面にあるクズを発見し、

そしてそれと向き合い、大切に育ててゆこうとする。

 

 

 

 

彼女らは別にクズな行為はしない。

いつもとおなじく教室でダベるだけ。

それでも黒々とした怖さが読者をとらえる。

 

 

 

 

1巻完結である本書は、『男子校系男子』を併載している。

キャラクターの性別はちがえど、こちらもクズ道を追求する。

たとえば、校則違反にならない程度に過激なファッション。

 

 

 

 

ハトポポコの作品は、当たり障りが「ある」。

読者を抑圧から解放するとゆう、ギャグ漫画本来の使命を果たしている。





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テーマ : 漫画
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川浪いずみ『籠の少女は恋をする』

 

 

籠の少女は恋をする

 

作者:川浪いずみ

掲載誌:『月刊コミック電撃大王』(KADOKAWA)2017年‐

単行本:電撃コミックスNEXT

[ためし読みはこちら

 

 

 

全寮制の女子高を舞台とする百合漫画だ。

僕の分類で言えば「クラシック百合」に相当するだろうか。

お姉さまがいて、挨拶はごきげんよう、みたいなアレだ。

 

作者の初単行本らしい。

背景描写が特別に巧みとゆうわけではないが、

むしろスカスカな感じが、漠然とした不安をかきたてる。

 

 

 

 

主人公の千鶴は、転校初日に身体検査をうける。

膣鏡をつっこまれ、処女であるかどうか確かめられる。

 

そこは特殊な学園だった。

少女たちは、裕福な男に「高値で売れる」よう教育されている。

 

 

 

 

「実技」の授業もある。

買われたあと役立つスキルを、女同士でみがく。

でも、ただの勉強では終わらないかもしれない。

 

 

 

 

同室の「冬子」に買い手がつき、卒業式がおこなわれる。

ウェディングドレスみたいな衣装を着せて、おくりだす。

悪趣味だと眉をひそめる生徒もいる。

 

いささか型破りな世界観の作品にちがいない。

 

 

 

 

やや理論的に本作を分析してみよう。

 

物語にはかならず「嘘」がある。

むしろ嘘があった方がおもしろいが、その数はひとつであるべき。

本作は「娼婦を育成する教育機関」と「百合」とゆう、二つの嘘をついている。

こんな学校があってもいいけど、でもそこで百合なんてあるかな?

読者はそう疑問におもう。

プロットに負荷がかかりすぎ、ギシギシ悲鳴をあげている。

 

ただ上掲画像からわかる様に、はっと息をのむ瞬間が本作にはいくつかある。

そのページをひろいあつめ、脳裏でつなぎあわせつつ読む作品だろう。

百合漫画は本来、そうゆうものではないか。





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苑田 謙

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