tMnR『たとえとどかぬ糸だとしても』

 

 

たとえとどかぬ糸だとしても

 

作者:tMnR

掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2017年-

単行本:百合姫コミックス

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女子高生「鳴瀬ウタ」を主人公とするストーリーは、兄の結婚式からはじまる。

新婦の「薫瑠(かおる)」は、ウタの幼なじみでもある近所のお姉さん。

その幸せそうな表情を最前列で見て、ウタはあることに気づいた。

自分が彼女に恋していて、はげしく嫉妬していると。

 

 

 

 

ウタはマンションで、新婚夫婦と三人暮らしをする。

日に日にふくらむ恋心を、義姉に悟られない様にしながら。

 

 

 

 

薫瑠は、家族関係に問題をかかえるウタのため、

母親代わりになろうと、かいがいしく世話を焼く。

 

ウタは葛藤する。

もとめているのは、そうゆう愛情じゃない。

けれども本当の気持ちを口にすれば、自分の世界は一瞬で崩壊する。

 

 

 

 

ツインテールの「クロちゃん」はウタの友人。

恋の迷宮をさまよう親友の愚痴を聞くのが日課となっており、

「感情サンドバッグ屋」を自称する。

 

 

 

 

ある日ウタは、友人を自宅に呼んだ薫瑠の会話を耳にする。

「いずれ自分の子供はほしい」と。

 

悪意のまったくない、死刑宣告。

ウタの胸のなかの時限爆弾がカウントダウンをはじめる。

もし出産が現実となれば、すべて手遅れだ。

 

 

 

 

自分の初恋が、だれより不幸せな終わりをむかえるのは仕方ない。

最初から覚悟している。

でもこんなに近くにいるのに、なにごともなく恋が消滅するなんて、かなしすぎる。

 

本作はtMnRの商業デビューであり、初単行本。

絵になる構図と、複雑かつ細やかな心理描写で、

百合の宇宙の深淵にせまっている。





テーマ : 百合漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 百合  百合姫コミックス 

藤田かくじ『放課後少女バウト』

 

 

放課後少女バウト

 

作者:藤田かくじ

掲載誌:『月刊キスカ』(竹書房)2016年-

単行本:バンブーコミックス

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最強の10代女子を決める大会「アルテミス」をえがく格闘漫画。

華やかなコスチュームが観客の期待を煽る。

 

ヒロインは「死神」の異名をとる「箕輪辰乃」。

つねに冷静沈着で、対戦相手の挑発にも眉ひとつ動かさない。

 

 

 

 

本作の特色はダメージ描写。

可憐な美少女が無慙に破壊されるさまに、昂奮する読者も多かろう。

看護師の卵なのに壊し屋でもある、「日野原瑞穂」の暴れっぷりがみどころ。

 

 

 

 

第5話で辰乃と瑞穂が激突。

絞め技だけで勝利をかさねてきた辰乃が、打撃の封印を解く。

 

 

 

 

マットに鼻血をまきちらしながら、不敵に笑う瑞穂。

この異常なまでの闘争心には、かくされた理由があるらしい。

 

 

 

 

将棋みたく数手先を読み合う固め技や寝技は、

総合格闘技の売りだが、いかんせん絵にすると地味になりがち。

しかし本作は、スカートをつかったギロチンチョークなど工夫している。

 

 

 

 

主人公は辰乃の同級生である「小仏孝雄」。

秘伝の整体術で、爆弾をかかえた辰乃をサポートする。

 

この設定が、打撃の制限やサービスシーンにかかわっており、

ストーリーが展開するなかで秘密もいろいろ明かされそうだが、

序盤のフックとしてはやや弱いかもしれない。

 

 

 

 

一心不乱に強さをもとめる少女たち。

ケレン味たっぷりのデザインや格闘描写は勢いが感じられ、

松井勝法『ハナカク』に匹敵する要注目作として推薦できる。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

外本健生/昌子春『ピッチディーラー -蹴球賭場師-』

 

 

ピッチディーラー -蹴球賭場師-

 

作画:外本健生

原作:昌子春

掲載誌:『ヤングマガジン』(講談社)2017年-

単行本:ヤンマガKC

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異色のサッカー漫画である。

主人公は、東京VERSUSに所属するゴールキーパーの「新堂龍司」。

ルーキーながら開幕戦のスタメンに抜擢された。

 

 

 

 

新堂は好セーブを見せるが、0-2で試合終了。

中心選手の滝・ハルク・佐々木とともに、暗い表情でロッカールームにのこる。

 

 

 

 

ホペイロ(用具係)が手入れしたスパイクを運んできた。

ところがシューズケースをあけると、中に数千万円分の札束が。

 

本作は、サッカー賭博にかかわる八百長をテーマとする。

漫画としては前代未聞のストーリーだが、海外ではよくニュースになる話だ。

 

 

 

 

作者は、八百長に手を染める4人を「プロフェッショナル」としてえがく。

彼らは世界各地の情報を掻き集め、完璧なシナリオを練る。

 

 

 

 

ボールを蹴るだけがサッカーじゃない。

女を取り合う選手同士の競争心を煽るなどして、試合をコントロールする。

 

荒唐無稽な設定だが、ドロドロした世界観のリアリティは、いかにもヤンマガ的。

 

 

 

 

シュートを防いだと見せかけてポストに当て、

ゴール前に走り込んできた相手選手の足許へころがす。

わざと引き分けたと観客に悟られない様にする「スーパープレー」。

 

いまだかつてないスリルを味わえるサッカー漫画だ。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

七都サマコ『そのアイドル吸血鬼につき』

 

 

そのアイドル吸血鬼につき

 

作者:七都サマコ

掲載誌:『月刊Gファンタジー』(スクウェア・エニックス)2017年-

単行本:Gファンタジーコミックス

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主人公は高校生の「朝陽湊(あさひ みなと)」。

交通誘導のアルバイトで稼いた金はすべて、アイドルの追っかけにつかっている。

 

 

 

 

推しはソロアイドルの「白日目(しらうめ)ココ」。

お砂糖みたく甘く可憐なパフォーマンスで、ブレイク確実と言われている。

 

 

 

 

ところがツアー最終日、ココは突然引退を発表する。

意気消沈した湊が夜の公園をさまよっていると、

ひとり池の前で涙をこぼすココがいた。

 

 

 

 

未練を断ち切れない湊は、引退を撤回するようココにせまる。

言い争ってるうちココの様子が急変し、湊にしがみついて首筋に歯をたてる。

 

実は吸血鬼であるココは、人間を襲う習性をもっており、

もうこれ以上人間と関われないと考えて引退をきめた。

 

 

 

 

その後いろいろあって、湊はココにかわって夢をかなえようと、

男性4人組のアイドルグループの一員として活動をはじめる。

 

掲載誌が『黒執事』などのGファンタジーなので、ストーリーは女性向け。

たとえば男が男の血を吸うシーンなどは、僕には合わなかった。

 

 

 

 

とはいえ、「生き血を吸う」と言う表現は大袈裟としても、

人を魅了するのが仕事のアイドルは、吸血鬼にたとえられてもおかしくない。

題材が興味ぶかいし、特にヒロインのうつくしさは一見の価値あり。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

佐々木ミノル『中卒労働者から始める高校生活』8巻

 

 

中卒労働者から始める高校生活

 

作者:佐々木ミノル

掲載誌:『コミックヘヴン』(日本文芸社)2012年-

単行本:ニチブンコミックス

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

若気の至りで若葉がシングルマザーとなった経緯が前巻で語られたが、

第8巻は元恋人であり、娘・ひなぎくの父であるトミーと再会したあとのエピソード。

 

家具売場でトミーが上司に、食器棚に社員割引が適用されるのかたずねる。

彼が職場でどんな様子か、若葉とヨリを戻すための覚悟がどの程度か、

さりげなく読者につたえるいいシーンだ。

 

 

 

 

そのころ若葉は38.6度の熱でダウンしていた。

休みをもらうべきか迷うが、クビになるかもしれないと思い直し青褪める。

シングルマザーらしい反応だ。

 

 

 

 

まことが買い物を届けにやってきた。

洗い物がたまった流し台を好きな男にみられ、

立ってるのも辛いはずの若葉は大騒ぎ。

 

 

 

 

無口で不器用なまことが帰り際に、若葉の葛藤を理解し肯定する様なことを言う。

主人公の成長が感じられるだけでなく、女性作家ならではの観察眼にくわえ、

「男の男らしさ」までテーマとして表現されてるのに脱帽する。

 

 

 

 

若葉があっぷあっぷになりながら人生のあたらしい扉をひらく、

26・27話の心理描写はとにかく圧倒的。

勿論ヒロインである莉央も、キャラクターの個性がさらに強調される。

 

なぜこの作品だけがこんなにもすばらしいのかと、不思議なくらいだ。





テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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苑田 健

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