下劣な本、前川ヤスタカ『八重歯ガール』

 

 

八重歯ガール

 

著者:前川ヤスタカ

写真:藤川望 川しまゆうこ

発行:朝日新聞出版 2011年

 

 

 

 

鈴の音色のごとく可憐な、荻野可鈴の表紙にひかれた一冊。

だが読後、心に隙間風がふく。

品性下劣な本だつた。

八重歯好きの男が、「日本の八重歯文化を守る」とか大法螺をふき、

八重歯女子専門ブログを立ちあげ、八重歯ブームの旗手となる。

まあ、だれが女の歯に執着しようと構わないし、部分的に教えられもした。

 

 

http://blog-imgs-26.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/IMG_0004_20120216165401.jpg

 

 

著者前川は、アメリカ社会を「歯列ファシズム」状態とよぶ。

真つ白で、一糸みだれぬ歯列でないと、人間あつかいされない。

アヴリル・ラヴィーン(カナダ出身)なぞ、吸血鬼よばわりだ。

理由がある。

皆保険が確立していない米国は、おほくの健康保険が歯列矯正に効く。

制度上有利な幼少期に、さつさとすませる。

一方で、国民の二割が無保険の国でもある。

歯並びの悪さは、貧困の象徴。

ゆがんだ価値体系が、ハリウッド映画などを通じ、各国に流布した。

 

 

http://blog-imgs-26.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/IMG_0003_20120216165401.jpg

あいな(メイドカフェ店員)

 

 

たしかに八重歯は不便だ。

モノがはさまる。

歯科的観点から、矯正をすすめられるのは当然。

でも、審美的観点のみから直すのなら、「勿体ない」と言いたい。

そう前川は力説する。

 

あなたの八重歯をチャームポイントと思う人は

まだまだこの日本にごまんといます。

たまたま八重歯を肯定的に捉えるこの日本に住み、

せっかく八重歯に「なった」のですから、

海外に迎合したような理由で八重歯をなくすのは非常に惜しい。

 

ここにはウソがある。

本当に八重歯愛好者が「ごまんと」いるなら、声高にうつたえる必要はない。

人間、五体満足、すべて整うのがよいにきまつてる。

均整のとれた肉体は、機能的でかつ、うつくしい。

歯の優劣と、顔の美醜は、切り離せない。

歯列は医学的事象で、他者が口出しすべきではない。

八重歯ガールをそそのかす連中は、口腔内の疾病に責任を負えるのか?

要するに、だ。

著者とその取り巻きにとつて女は、単なる鑑賞物でしかない。

 

 

 

 

 

http://blog-imgs-26.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/IMG_0005_20120216165401.jpg

 

 

1985年デビュー、「みつちよん」こと芳本美代子。

小動物的な、八重歯アイドルの代表格だ。

あかるい性格で人気を博し、息のながい藝能活動をつづけている。

1996年には、俳優の金山一彦と結婚。

 

 

http://blog-imgs-26.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/IMG_0006_20120216165255.jpg

 

 

芳本美代子は後に俳優の金山一彦と結婚し、八重歯を卒業してしまいます。

そして彼女が八重歯を矯正した後、夫、金山一彦の不倫が発覚。

その相手が片八重歯の河合美智子〈16〉だったというのは何とも皮肉なことでした。

 

歯列矯正のせいで不幸になつた、といわんばかり。

治療を「卒業」と称し、別れとみなす冷酷さにも、虫唾がはしる。

女そのものより、歯の方が好きらしい。

 

 

 

 

 

他人の顔をウンヌンするのは、紳士の言動ではない。

「うつくしい」という形容詞すら、おほくの場合、非礼にあたる。

耳が痛いけれど。

オレは、女の顔についてよく書く。

書きすぎなほどで、スナップ写真まで撮る。

不躾と自覚している。

だが、この美を自分なりに表現し、共有しないわけにゆかない、

そういう変な使命感に駆られ、おそれおののきつつ、

キーボードをたたき、シャッターをきる。

 

 

『B.L.T.』(東京ニュース通信社)2010年12月号

 

 

オレは岩渕真奈を、その瞳の大きさゆえ、

 

 

https://blog-imgs-34-origin.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/vlcsnap-2011-07-23-15h34m03s245.png

『黄色い星の子供たち』(フランス映画・2010年)

 

 

メラニー・ロランを、その顎の尖り具合ゆえ、

 

 

『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』(アメリカ映画・2004年)

 

 

エミリー・ブラウニングを、その唇の厚さゆえ、愛すのではない。

この衝動は、手のとどかぬ深淵からあふれる。

力量がたりず、うまくあらわせない。

全身全霊で斬り結ぼうが、彼女らの類い稀な個性、崇高たる美に撥ね除けられる。

それでも書く。

なのに八重歯村の村人どもときたら、犬歯がどうとか……。

心底から軽蔑する。

 

 

 

 

 

http://blog-imgs-26.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/IMG_0002_20120216165254.jpg

佐倉絆(グラビアアイドル)、森実咲(BLESS)、井上ゆりか(大学生)

 

 

え、オマエは八重歯女子が嫌いかつて?

好きですよ。

すごくカワイイとおもいます。

だが男子たるもの、公衆の面前で、慾情を垂れながすのは慎むべし!




関連記事

テーマ : 美容と健康
ジャンル : 心と身体

最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
月別アーカイヴ
11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03