與那覇潤『中国化する日本』

ミュンスター条約締結の図(ヘラルト・テル・ボルフ画)

 

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

 

著者:與那覇潤

発行:文藝春秋 2011年

 

 

 

16世紀の地球は、日本とおなじく戦国乱世。

波乱しづまる1600年ごろできた社会が、そのまま現存する。

(北米や豪州などの移民国家をのぞく)

日本なら江戸時代、支那なら清朝、ヨーロッパならヴェストファーレン体制の近代主権国家。

そう、そういうこと。

日本は今の今まで、近代化、つまり西洋化されてない。

明治維新は、未遂の「中国化」にすぎない。

官営富岡製糸場が大赤字だつたとか、ドイツで伊藤博文が憲法をまなんだ、

ローレンツ・フォン・シュタインがオーストリア人で、皇帝専制を嫌つていたとか、

教科書にかいてない智識が満載でお得な本だ。

「近代」なんて、ロクなもんぢやない。

法の支配、基本的人権、議会制民主主義。

これらは中世貴族の既得権益を、ヨーロッパの民衆がかすめとつたもの。

単なる御当地文化で、移植しようがない。

 

 

 

 

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何尊铭文

 

では「中国」とはなにか。

著者はこういう。

 

可能な限り固定した集団を作らず、

資本や人員の流動性を最大限に高める一方で、

普遍主義的な理念に則った政治の道徳化と、行政権力の一元化によって、

システムの暴走をコントロールしようとする社会

 

むつかしい。

要するにそれは、進歩がないくせに、キレイゴトだけ叫ばれる社会。

たしかに日本もそうなりつつある。

多分、世界も。

1973年。

オイルショックでイスラームが、ヨーロッパから歴史の主導権をとりもどす。

チリでは近世支那的な独裁者ピノチェトが、経済発展をもたらす。

1979年。

小平、サッチャー、レーガン。

支英米三国で同時に、「新自由主義」の経済がなりたつ。

中国化する世界。

 

 

 

 

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石山合戦図(和歌山市立博物館蔵)

 

日本……そんな国もありましたつけ。

支那宋朝のマネはできなかつた。

科挙を導入したくても、紙と印刷技術がない。

ただ宋銭だけ流入し、貨幣経済が根づきかけた。

それなのに、後白河法皇と平清盛らの革新勢力は、

守旧派貴族があやつる坂東武者により壇ノ浦にしづめられた。

戦国時代。

宗教勢力たる石山本願寺が列島を制すれば、

日本がひとつの思想のもとに統合されるはずだつた。

勝つたのは織田信長。

なに、楽市楽座がえらいつて?

全世界を楽市楽座しようとしたモンゴル帝国とくらべ、ちいさきことよ!

そして江戸時代。

支那で600年前に廃止された身分制度が冷凍保存された。

 

 

 

 

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支那事変での蒙古族の戦い(1940年)

 

1937年、支那事変がはじまる。

支那の軍隊は猛烈によわかつた。

どこかの国みたいに、群れなし行動するのが嫌いだから。

でも日本は負けた。

支那人自身が掌握できない社会を、日本人が管理できるものか!

のちの太平洋戦争は、支那事変敗北のオマケ。

戦後。

江戸時代のムラは、「会社」と名をかえ存続する。

しぶとい、けどもう限界。

 

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エルヴィス・プレスリーの故郷、グレイスランドに向かう小泉純一郎(2006年)

 

小泉純一郎は、支那皇帝ばりの統治術をつかつた。

たとえば靖国神社への参拝。

「A級戦犯は戦争犯罪人だ」と主要報道機関の顔をたてながら、

「二度と戦争をおこさないという気持ちで参拝して、なにが悪い」と居直る。

動機のうつくしさを強調し、批判する人間の方が偏狭とおもわせる。

ポスト小泉の政局は、政策論争よりスキャンダル攻撃に左右されるが、

これも徳治主義の中華世界の政治様式に似る。

 

 

 

 

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ちなみに著者は三十二歳。

自分より年下の歴史家の登場に、いささか困惑した。

ページごと書名があげられ、たしかによく勉強しているし、

それを強引につなげる腕力に舌をまく。

いや、本書のべらんめえ口調は、当人がおもう以上に寒いし、

特に「アウト・オブ・眼中」なんて言い回しは最悪だつた。

ほかにも、84ページと269ページの身分制度の記述は矛盾だ。

御都合主義は、附箋をはりつつ読む、ボクみたいな読者に通じない。

でも、すごい本だ。

291ページ。

與那覇は隣国の儒教精神を逆手にとり、憲法九条の理念をおしつけろと主張する。

目から鱗がざらざら落ちてゆく。

まだこの国も、捨てたもんぢやないかな?





中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史
(2011/11/19)
與那覇 潤

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