ハゲててもいいじゃない ― 「リボルバー」をみて

飛び込み

リボルバー
Revolver
出演者:ジェイソン・ステイサム レイ・リオッタ アンドレ・ベンジャミン
監督:ガイ・リッチー
(2005年/イギリス・フランス/115分)
[吉祥寺バウスシアターで鑑賞]

※このエントリは若干のネタバレをふくみます

世界一運び屋がにあう男、ジェイソン・ステイサムはすきな役者だ
飛込競技でオリンピックに出場したほどの運動神経のもちぬしで、アクションの切れは抜群
するどい顔つきの二枚目でもあり、ぶっきらぼうなロンドンなまり(たぶん)がいなせだ
30歳をこえておれも髪のはえぎわがあやしくなってきたが、ジェイソンはそんな世の男性たちの希望を一身にになう存在でもある
ハゲてもジェイソンみたいになれればいいじゃん、と
まあ無理なんだけど
馬があうのかマドンナの旦那とのコンビは三作目となり、クールな演技を堪能させてもらおうとおおいに期待していた
いつものスキンヘッドではなく、のこりわずかな頭髪をうしろになでつけた貧相なすがたに不安をおぼえつつ…

本作で元飛込選手はギャンブラーだか詐欺師だかよくわからないが、とにかく頭脳労働者にふんしている
髪をのばさせたのはインテリにみえるようにという演出だろう
アクション俳優に知的な役はあわないと安易にきめつける気はないが、結論をいえばミスキャストだ
ジェイソンがチェスをさす場面がしつこくくりかえされるたびに、あまりに不似合いでしらけてくる
インタビューによると監督よりジェイソンのほうがチェスがつよいらしいが…
スポーツ選手としても、モデルとしても、俳優としても成功した人物でバカのわけはないが、俳優のあたらしい顔をひきだすのはそんなに簡単なことではない
反省して一から体をきたえなおしてもらいたい
もちろん頭はそらなくてはならない

現代的なひねりをくわえてはいるが、この映画はコンムービーの伝統につらなっている
詐欺師が知恵をしぼってギャングから金をまきあげるという筋だ
かならず最後にどんでん返しが用意されており、すかっとだまされる快感をあじわえる名作がおおい
さいきんでもこの手の映画はよくつくられるが、すでに詐欺のネタは出つくしているとおもう
たいていのオチは「スティング」形式、ようするに主人公が一枚うわ手の相手にはめられるが、それもじつはもともとの計画だったというやつ
あたらしめのでは「コンフィデンス」や「マッチスティック・ラブ」がそうだった
ネタバレしておいてなんですが、どちらもおすすめです
ほかに、黒幕が身内だったという「ユージュアル・サスペクツ」系、じぶんの敵はじぶんという「ファイト・クラブ」系などがある
コンムービーのファンはへたな警察官より詐欺の手口に精通しているので、脚本家がどれだけ犯罪計画をねっても、スタッフロールのころには「ああ、○○系ね」とえらそうに批評されてしまう
まあ制作者にとっては割にあわないジャンルかもしれない

そこでマドンナ・ルイーズ・チッコーネ(旧姓)の旦那が用意した罠は、オチがないというオチ
最終的に黒幕もペテンの計画の全貌もあかされない
そもそもだれかが詐欺をたくらんでいたのかどうかすら、はっきりとしない
…この映画じたいが詐欺じゃん
1800円とられちゃったよ
ガイ・リッチーはロンドンの下町を舞台にした犯罪映画の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」で名をあげた映画監督
アウトローをきどってロンドンなまりの「コクニー」でしゃべるが、じっさいは準男爵の家柄のボンボンで、口のわるいイギリス人から「モックニー」(いんちきコクニー野郎)といわれているらしい
2000年になぜかマドンナと結婚し、アメリカで「スウェプト・アウェイ」を撮るがこれが大コケしたあげく、夫婦そろってゴールデンラズベリー賞を獲得するという栄誉にかがやいた
そして映画人生のどんでん返しをねらい、イギリスにもどってつくった原点回帰の犯罪映画がこの「リボルバー」になる
10年のキャリアはすでにうさんくささがたっぷりだ

レイ・リオッタ、アンドレ・ベンジャミン、ヴィンセント・パストーレといった強面のアメリカ俳優をそろえたはいいが、ただたんにこわいだけといえなくもない
いまさら単純な犯罪映画は撮りたくないということで、2年をついやして脚本をなんども書きなおし、現場では即興で演出し、主人公の内面をえぐるような作品をめざした
失敗してしまったが
登場人物がなにをかんがえているかわからないから詐欺師の映画はおもしろいんじゃないか
そのルールをやぶれば物語が破綻するのはあたりまえだ
マーク・ストロングがえんじるクールな殺し屋など演出面でみるべき部分はあるが、全体としてはまったく力づよさをかんじない
リッチーはことしのナイキのCMが評判になっているし、才能のある人物なんだろう
とはいえ、2時間の劇映画でひとのこころをうごかせられるかどうかはまたべつの話
エレベーターのなかでのジェイソンの意味不明なひとり芝居がなんともさむざむしい

本国にもどって処女作にはあったエネルギーを再発見することはできなかったが、りっぱな奥さんもいることだし次回作はがんばってほしい
ただ髪の毛とおなじで、男の活力ってのはいちどうしなったらもうもどらないのかもしれないが
そして、その事実をうけいれることからつぎのゲームがはじまる
飛込選手から役者に転向したジェイソンのように
悪口をいってしまったけれど、この映画のおかげでひさしぶりにバウスシアターにいけてよかった
こぢんまりとしてすきな映画館なんだ
吉祥寺のサンロードをあるくのもたのしい

theme : 映画感想
genre : 映画

comment

Secre

あまりよろしくなかったですか〜

私も観てきました!渋谷で。

私がガイ・リッチーラブだから
贔屓目になってしまったかもしれないです…。
「おもしろい!」よりは「圧倒された!」映画でした。
かなり哲学で、もう一回観ておさらいしないと、
なかなか難しかったですが…。

レイ・リオッタの「Ferar me」にはド肝抜かれました。
ジェイソンもかっこよかったです。
あんまり活躍してなかったけど(笑)主役なのに。

いつもコメントありがとうございます!

なるはさんがいないとこのブログは荒野です(笑)

「リボルバー」、映画館帰りの勢いで安易に批判しちゃったかなって思ってます
いちおう最後までたのしめましたし
ただゲージュツっぽいところがあんまり好きになれないかな
でも個性的な映画であるのはまちがいないですね
なるはさんがどうレビューするのか期待してます
書いているひと

ケン

Author:ケン
男。ファミコン世代。
千葉市出身、新宿区在住。

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nekrasov.aoe■gmail.com

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