『孔子の教え』
孔子の教え
孔子
出演:チョウ・ユンファ レン・チュアン チェン・ジエンビン ジョウ・シュン
監督:フー・メイ
制作:中国 2009年
論語をよんで敬服するのは、こんなくだり。
孔子は喪服を着た者、礼服を着た者、
それに目の不自由な人に会った時には、いよいよ挨拶する場合、
もし先方が年下でも、必ず席を下りて立ってお辞儀した。
その人たちの前を通る時には、必ず小走りして敬意を表した。
子罕第九
宮崎市定・訳『現代語訳 論語』(岩波現代文庫)
自分にはできないとおもう。
たとえば弟子と酒をのんだ帰り、気づかず盲人の前をとおりすぎたら?
かれらの師が、口先だけの男とばれてしまう。
孔子は只者ではなかつた。
一日二十四時間、礼を失せずに人は生きられる、と信じていたのでは。
顔回役のレン・チュアン
本作は、二千五百年の時をさかのぼる伝記映画。
無邪気に師をしたう顔回、喧嘩つぱやい子路など、おなじみの弟子も奔走する。
春秋戦国時代の書をよむとき、映像はほとんど脳裏にうかばないが、
それがすみずみまで銀幕に実体化してるので、びつくり。
孔子の人生は、映画にするほど波瀾万丈でなかつたはずだが、
意外にも陰謀が渦をまく宮廷劇をたのしめた。
春秋時代の魯は、吹けば飛ぶ様な小国にすぎないわけで、
支那の歴史総体の複雑さをおもうとクラクラする。
斉との和議をまとめる、「夾谷の会」の宰領をまかされる。
相手方の策略を察し、裏をかく。
わかい顔回が進行役をつとめ、会見は血を流さずおわる。
史実と異なるらしいが。
孔子の父は、すぐれた軍人だつたという。
その息子も、単なる本の虫でなかつた様だ。
二丁拳銃で数々の修羅場をくぐりぬけた、
歴戦のチョウ・ユンファだからこそ出せる貫禄。
さて魯を追放され、たどりつきたるは衛の国。
そこには悪名たかい姦婦、南子がいた。
霊公の寵姫に扮するは、妖精のごときジョウ・シュン。
孔先生に色じかけでせまる。
おもしろくなつてきた!
どこふく風。
さすがは聖人さまと、感嘆すべきかな。
でも雍也第六では、子路に問いつめられ動揺してる風だけど。
プログラムをひらくと、女性監督の姿があつた。
なんだ、これも「女の映画」か。
どうりで美青年ばかり熱心に追いかけるわけだ。
師弟愛を、同性愛にちかづけるのだけは勘弁。
例によつてキレイキレイな映画であるが、
行住坐臥、かたときも礼をわすれず、仁の体得をめざし、
幸福とは逆方向の道をあゆんだ男の滑稽さは、えがけてない。
孔先生。
あなたの教えはいまだ理解されてない様ですよ。
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