ジョージ・フリードマン『激動予測』

アメリカの主な貿易相手国

 

激動予測 「影のCIA」が明かす近未来パワーバランス

The Next Decade: Where We've Been ... and Where We're Going

 

著者:ジョージ・フリードマン

訳者:櫻井祐子

発行:早川書房 2011年

原書発行:2011年

 

 

 

バラク・オバマが大統領選で勝つたとき、各国のバーで祝杯があげられた。

一年たたずに、ノーベル平和賞まで授与された。

数十億人が、この役職を注視する。

「世界皇帝」の一挙手一投足に。

 

わたしは共和国の熱心な信奉者だ。

歴史は、正義のことなど気にもかけてないかもしれないが、

わたしは大いに気にかけている。

帝国と共和国の関係について、

これまで長い間考え続け、ある結論に至った。

もしアメリカの共和制が永らえるとすれば、

それを守れる制度は、大統領の職しかないということだ。

 

共和主義の理念をまもるため、帝国を運営するという皮肉。

本書の主題は、今後十年の世界の動きを予測すること。

未来は、過去や現在と同様、平和でありえない。

「貿易でむすびつけば戦争はおこらない」という、

自由貿易の提唱者がこのむ論法はウソつぱちだ。

相互依存度が高まれば、かならず摩擦や戦争がおきる。

 

経済危機の本当の怖さは、政治への影響にあることを、

ルーズヴェルトもレーガンもわかっていた。

国民の窮乏が積み重なれば、体制そのものが崩壊しかねない。

指導者としての自らに課された役割が、

問題の解決ではないことを、二人は理解していた。

じっさい大統領は、経済にほとんど影響をおよぼすことはできない。

 

引用文の最後に目をみはつた。

わが国の民主党の「生活第一」をもじるなら、フリードマンの主張は「戦争第一」。

国内問題では、憲法と法律と慣習でガンジガラメ。

だが軍隊の指揮権は、大統領にある。

戦争はさけられない。

先延ばしすれば、敵を利するだけ。

 

 

 

 

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ウクライナとカザフスタンの隙間

 

NATOもIMFも国際連合も、すべて冷戦の遺物にすぎない。

世界は1991年に生れかわつた。

それはそうだろうが、断言されるとガーンとくる。

では二十一世紀における、アメリカの最大の敵は?

無論ロシアだ。

2004年のウクライナ大統領選挙をめぐり、

寝惚けていたアメリカと、再興したロシアは、ふたたび袂をわかつ。

ウクライナとカザフスタンに挟まれた五百キロ弱に、

パイプラインと、コーカサスへの通路がひしめく。

気づかぬうち、シャレですまないほど仇の首を絞めていた。

 

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北ヨーロッパ平野

 

冷戦時代とことなり、もうドイツを盾にできない。

天然ガスでロシアに依存しているから。

2008年の金融危機は、EUの亀裂を印象づけた。

ヨーロッパの意思決定をドイツが主導しているのは明白なのに、

それでも東欧諸国を救済しなかつた。

期待したいのはポーランド。

アメリカは仲間だとおもわせ、北ヨーロッパ平野で暴れさせ、

モスクワとベルリンの恋路を通せんぼさせる。

敵をあざむくには、まづ味方から。

 

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アラビア半島およびペルシア湾

 

「トルコが主役の一人でない二一世紀など考えられない」と著者はいう。

そんな物語は想像したこともないので、ため息がでた。

中東には、「イラン-イスラエル-トルコ」の三角形をえがこう!

イランは北朝鮮の台本を借りている。

核兵器を使いかねないと思わせるため、キチガイの様な発言をくりかえす。

もし核施設を破壊されたら、イランはホルムズ海峡に機雷を敷設する。

世界の海上石油輸送の45%がとまる。

帝国は、イランと和解する必要がある。

つまり世界皇帝は、悪魔とも手をむすぶ。

ルーズヴェルトはスターリンと、ニクソンは毛沢東と。

敵の敵は味方。

 

 

 

 

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1900年当時の帝国

 

共同体は、戦争から生れる。

「運命の共有」という意識が、民族をまとめる。

それに、大抵の技術革新は、軍による投資がうながした。

蒸気機関、航空機、無線、州間高速道路網、マイクロチップ、インターネットなど。

しかし過去十年で、劇的な進化はない。

マイクロソフトは化石みたいだし、アップルは陳腐な遊びを楽しげに装うだけ、

グーグルとフェイスブックは、ただの広告代理店だ。

新技術なしで帝国は維持できない。

ペリシテ人がレバントの沿岸地方を支配できたのは、鎧づくりに長けていたから。

ローマ帝国の道路や橋は、いまだに使われている。

いまのアメリカはカネのことばかり考えているが、いづれ軍事的圧力にさらされる。

二十世紀は大規模な戦争が三度たたかわれた。

まちがいなく今世紀もそう。

小競り合いで勝ちをかさねても、大戦に敗れればすべて失う。





激動予測: 「影のCIA」が明かす近未来パワーバランス激動予測: 「影のCIA」が明かす近未来パワーバランス
(2011/06/23)
ジョージ・フリードマン、George Friedman 他

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