瀬口たかひろ『ゆりキャン ~ゆりかのキャンパスライフ~』
ゆりキャン ~ゆりかのキャンパスライフ~
作画:瀬口たかひろ
原作:原田重光
掲載誌:『ヤングアニマル』(白泉社)2010年10号~
[単行本は「ジェッツコミックス」として、第一巻まで刊行]
石田純一が泣いて逃げだしそうなセリフを吐くのは、
名門女子大二年生のゆりか。
でもなにを隠そう、彼女はノンケ。
堂々たる百合宣言の裏には、所以がある。
ある日いきなり、父の会社が倒産。
セレブのゆりかは、履歴書の書き方もわからない。
甲斐性なしの娘に、父は「スケコマシになれ」と助言する。
美人なのに色気ゼロ、男にまるでモテないので、
当座は女に食わせてもらうしかない!
つまり『ゆりキャン』は、金銭目的の百合をえがく。
この流派の非現実性を逆手にとる、破壊的なコメディだ。
白泉女子大学の、ゆりゆりしい授業風景。
ボクは、とある女子大の一年生にすこし関りがあるけれど、
こんな日常をおくつているなら心配だ。
あのコは、やたら女にモテるから……。
玉の輿をねらい、医学生との合コンに参加するも、むらがるのは女ばかり。
美人なのに、「男として本能的にまったくそそられない」から。
あれ、それつて瀬口たかひろの作風とおなじ。
うまいのに、全然エロくない。
2011年という百合時代に、性愛をどう描くべきかという、
緊急かつ重大なテーマにとりくむ漫画だ。
百合なんてくだらない。
でも、避けてとおれない。
ヤクザの娘で、ばりばりのヤンキーでもある翔子。
彼女もあつさりコマされる。
寮の騒音被害をとめるために。
学内の野草をつんで飢えをしのぐ、生活力皆無のゆりかだが、
ダメ人間ゆえに、色恋沙汰では抜群の度胸をみせる。
あらゆる花が散される。
「女の敵は女」つて、こんな意味だつたのか。
沙織は、小学校以来の幼なじみ。
物語では「正妻」あつかい。
「別にわたしは百合とかじゃないですけど」が口癖だが……
……恥しい百合ポエムを綴つてきたボクものけぞる様な、
壮大な百合哲学の体系をうちたてる。
『ゆりキャン』は、信者の幻想を粉々にうちくだく爆弾だが、
どつこい百合思想は、いまが盛りと咲きほこる。
版図を拡げつづける帝国の勢力に、恐れおののいた。
![]() | ゆりキャン 1 (ジェッツコミックス) (2011/07/29) 不明 商品詳細を見る |
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