中村とうように捧げる歌

仕事がおわり、小雨にぬれる夜道をあるく。

『ミュージック・マガジン』八月号をかつた。

高橋修編集長が自身の趣味をごり押しする、巻頭のK-POP特集に絶望。

マーク・ラパポートも去つたし、この雑誌は終つたな……。

地下鉄でパラパラめくるうち、中村とうようのコラムが目にはいる。

なになに、「君が代ほど気持ち悪い歌はない」つて?

七十九歳になつても、この人だけは絶対かわらない。

 

 

 

 

『逆転裁判』(カプコン)

 

公立高校の卒業式で生徒に「君が代」を歌わせることが、

憲法十九条に反するかどうかの裁判で、

五月三十日に最高裁は合憲との判断をしめした。

これをうけ音楽裁判官が、音楽としての「君が代」を裁く。

筋金のはいつた左翼だ。

 

http://blog-imgs-34.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/vlcsnap-2011-07-21-11h52m26s172.png

『つっぱり大相撲』(テクモ)

 

実際に相撲の千秋楽の中継で「君が代」斉唱が始まると、

ぼくは必ず音を消してこの歌が終わるのを待つ。

モンゴル人である優勝力士の白鵬がこの歌を

どんな気持ちで聞くのかと気の毒になってしまう。

 

歌詞は、古くからさまざまな形で歌われてきた「雅歌」といわれるが、

すくなくとも明治以来に国歌としてあつかわれたのは、

「君が代」が“天皇の治める世”という意味にとられていたからに他ならない。

そんな歌を、明治から昭和前半の日本の歴史を体験したものが、

平気で歌えるはずがない。

 

http://blog-imgs-34-origin.fc2.com/n/e/a/nearfuture8/img_1599562_49796318_0.jpg

 

メロディは雅楽の壱越調を基にしたとされるが、

雅楽にもこんなヘンな歌はめづらしい。

「さざれ、いしのー」「こけのー、むーすー……」の部分が強く歌われることで、

違和感は極度につよまる。

こういうヘンな歌だからこそ一部の人間は、

学校行事で一斉に歌わせることに快感をおぼえるらしい。

そこがますます気持ち悪い。

 

なるほどね。

音楽としての「君が代」の魅力なんて、マジメに考えてなかつた。

とうようさんが言うなら、ただしいだろう。

ちなみに彼は、「日の丸」は嫌いではないそうだ。

 

 

 

 

……なんて文章を昨日から書いていたら、当の中村とうようが死んだ。

飛び降り自殺らしい。

たしか生涯独身、孤独ゆえの捨身と解釈できるが、

そんなメソメソした世界と無縁な人のはずで、困惑させられる。

最期まで権力に盾突く人生。

おもしろおかしく書きはじめた文章は、追悼文になつた。

彼に捧げる歌はない。

音楽の巨人に、なにを聞かせればよいのか?

つまらぬ曲をかければ激怒し、天上を騒がせてしまう。








武蔵野美術大学美術館では、

九月二十四日まで「中村とうようコレクション展」を開催している。


関連記事

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
月別アーカイヴ
04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03