『W杯で勝つ ザッケローニの戦略』

(撮影:スエイシナオヨシ)

 

W杯で勝つ ザッケローニの戦略

 

編集長:宇城卓秀

発行:宝島社 2011年

[別冊宝島]

 

 

 

いささか厄介なムックだ。

今野泰幸も「ちよつと怖くなつてきた」ともらすほど、日本代表の戦術が丸裸に。

とはいえアルベルト・ザッケローニの哲学は、いたつてセンプリチェ。

攻撃はワイドに、守備はコンパクトに。

みづからはサイドチェンジを多用し、敵にはつかわせない。

陳腐ですらある。

 

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今野はいまや、国土防衛司令官の任にある。

フォワードが守備の起点となり、敵にあえて縦パスを選択させ、

うしろの選手で囲いこんでボールを掠奪。

守備時こそ、主導権を握るべし!

「3-4-3」でもおなじ。

中央に位置する今野は、断続的にラインを上げながら、

相手フォワードへのパスをねらい飛びだす。

ふたりの「サイドバック」が中にしぼる。

またサイドハーフは、敵が逆サイドでボールをもつ場合、

危険なら後退し、平時はボランチの様な位置につく。

つねに状況を見極め、最適な場所にいられるよう精をだす。

 

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吉田麻也によると、4バックの動きにも独自性がある。

敵がヴァイタルエリアでボールを保持するとき、

サイドバックは外を向いてはいけない。

 

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CBとSBのあいだにパスを通されたくないから。

雀の涙ほどでも、ボール保持者に重圧をかける。

吉田はストイコビッチ監督のもとで二年プレーしたので、

ザックとピクシー、側面攻撃を愛する両雄の比較がおもしろい。

ピクシーは、ボールをもてば徹底的にサイドからクロスをあげさせる。

片側がダメなら、サイドチェンジで逆からくづす。

ザックは、三人目の動きで同サイドにこだわる。

 

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(撮影:今井恭司)

 

昨年引退した三浦淳宏は、サイドバックの縦パスに注目する。

「逆サイドにふつたら縦にいれろ」という、決めごとがあるらしい。

ザッケローニの戦術は、ひたすら前方を見つめる。

 

 

 

 

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(撮影:柴田和彦)

 

二十二歳のゴールキーパーである権田修一は、

コーチから手の出しかたをおそわつた。

外からでなく、まず体の中心に両手を合流させ、パッとひらく。

手がより一体化し、ファンブルを防げるのだとか。

こまかいなあ。

 

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(撮影:弓削高志)

 

ウディネーゼ時代、ザッケローニ指揮下の三年で、

三十六得点をきめたパオロ・ポッジ。

故郷ヴェネツィアのリド島でサッカースクールを主宰するいまも、

かつてのボスと頻繁に電話ではなす間柄らしい。

ビッグクラブを率いていたころ、ザックは選手が言うことを聞かないとボヤいた。

そんな教え魔にとつて、日本は天国だ。

本人はオプションのひとつと嘯くが、あのザッケローニが、

ウディネーゼ以降だれも使いこなせない「3-4-3」を、

わが代表チームで蘇生させる夢を、簡単に捨てるはずがない。

それは情熱であり、理想であり、生きがいだ。

 

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遠藤保仁の辯。

 

うーん、実は僕自身はサイドチェンジがあまり好きじゃないんですよ。

サイドチェンジは、攻撃のときに有利に思えて、

不利な部分もたくさんあるのでね。

(略)

サイドチェンジをしたら、極端に言ったら1対1になる場面が多い。

取られたらカウンターを食らって、

自分たちが完全に不利な状況に陥ってしまうことが多々ある。

 

サイドチェンジに重きをおく指揮官への批判と受けとれなくもないが、

意地悪な解釈をされないのは人徳ゆえか。

ヤットにいわせると、バルセロナはバックパスが多い。

たとえばシャビが、ピケやプジョルからボールをもらつたとき、

自分はターンができても、あえてブスケツに預ける。

確実にパスコースをふやすために。

なるほど。

ヤットは、バックパスを悪徳とみなす昨今の風潮とは、別の次元にいる。

いうまでもなく、日本代表のシャビは遠藤であるわけで、

サッカー戦術とは、複雑で曖昧で折衷的なものとわかる。

 

 

 

 

 

瓶ジュースの蓋をならべフォーメーションをつくる遊びに、

十歳のアルベルト少年は夢中になつた。

還暦を迎えんとする、いまも。

机上の空論を、ふたたび現実のものとするために。





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(2011/05/24)
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