勃発!世界ユリ大戦 ―― 『エンジェル ウォーズ』
エンジェル ウォーズ
Sucker Punch
出演:エミリー・ブラウニング アビー・コーニッシュ ジェナ・マローン オスカー・アイザック
監督:ザック・スナイダー
制作:アメリカ 2011年
ボクのかわいいベイビードール。
身の丈は手のひらサイズ。
エミリー・ブラウニング
ため息にそよぐプラチナブロンド。
娼館での無感動な日々。
ゴミにうもれた瓊玉。
スープをすくえそうな睫毛。
絶望しかもたらさない視界に、緞帳をおろす。
彼女が苦界に身をしづめたのはワケがあるが、
本作の場合、物語を詳述すればヤボになる。
ただひたすら、少女の面がまえに酔い痴れたい。
ゆらゆら。
憂い顔の天使は踊り、ひとりのこらず魔法にかける。
ボクらは瞬きもできない。
戦場。
黒のセーラー服。
右手に刀、左手に45口径。
蝶のごとくただよい……
銃弾をもふせぎ……
蜂のごとく刺す。
『サッカー・パンチ』――クソダサい邦題は口にしたくない――の主題は、
「女は善で、男は悪」という、百合の王道をゆくもの。
つまり、世界の真理をえがく映画だ。
彼女たちは、ひとりぢやない。
ジェナ・マローン
無造作にハネたショートカットの「ロケット」。
横顔のうつくしさ!
女性のみなさん、残念でした。
鏡の前でどれだけ化粧しようと無意味です。
あなたが一番奇麗にみえる角度は、真横だから。
終盤で、この鋭角的なアゴは一発くらう。
ザックさん、わかつてるなあ。
気さくなロケットは、新米娼婦ベイビードールの世話をやくが、
もとは不良で、ケンカして家をとびだし、春をひさぐ身の上に。
心やさしいゆえグレてしまう。
少女はえてして、そういう生き物。
アビー・コーニッシュ
ロケットの姉である「スイートピー」。
クロウト女とはいえ情がこわく、新入りにキツくあたる。
しかし途轍もなく妹思いで、自分は家族とうまくいつてたのに、
後を追つてみづから娼館にとびこんだ。
江戸の郭話みたいで泣ける。
顔がゆがむほど押しつけられた、レミントンの散弾銃。
その視界の隅には、つねにロケットの姿が。
暴走する妹を叱ってばかりでも、彼女が危機におちいると、
スイートピーはかならず隣りにあらわれる。
「別に。死ぬところを見たかつただけ」。
ツンデレの姉妹百合か。
ザック師匠、わかつてるなあ。
ザック・スナイダー『エンジェル ウォーズ オフィシャルガイド』(小学館集英社プロダクション)
アレックス・バーディーによる宣伝素材から。
ボ、ボクのかわいいベイビードールが……!!
なぜだ!
なぜアメリカ人が絵をかくと、こうなるんだ?
精神医療施設「レノックス・ハウス」の構造模型。
撮影計画を練るためのブツだが、絶対たのしんで作つている。
映画の国の住人の、立体化にかける執念は計りしれない。
ベイビードール愛用の45口径は、キュートなストラップつき。
モノグラムが刻まれたデコ拳銃だ。
一場面しか出ない城でも、ひたすら図面を描きまくる。
築城、それは男の夢。
一度だけ登場するメカ。
いちいち参照用のモデルをつくるのは当然。
これは仕事なのか趣味なのか。
うらやましい……。
『サッカー・パンチ』は、たとえば押井守がつくつてもよい作品だが、
しかし彼の近作『ASSAULT GIRLS』は、
黒木メイサの足以外価値のない無慚な出来だつた。
がんばろう日本!
二次元に閉じこもつてたら、未来はない。
実はアマンダ・セイフリードの代役だつたオーストラリア人。
バストを寄せて上げて、ウエストを絞ったセクシーな戦闘衣装は
「セーラームーン」の月野うさぎみたいだったでしょ?
最初に刀を渡されたときは思わず彼女の“決めポーズ”を真似しちゃったもの(笑)。
映画パンフレットから
無鉄砲な暗黒ナース。
正直な話、私の衣装は露出が足りなかったと思うわ。
ほかの女の子は太ももむき出しなのに、ロケットは網タイツを履いてるのよ。
最初の衣装合わせのときは露出度が高いと思っていた衣装だけど、
訓練で肉体を絞った後は「もっと見せてもいい」って気分になっちゃった。
ジェナさん、気持ちはわかるけど、アミタイ最高でしたよ。
ザック先生が、いの一番に出演を依頼したかた。
衣装を身につけた日、「この服でハイキック?」と不安になったの。
だから衣装デザイナーのマイケル・ウィルキンソンを別室に呼んで、
すべての動きをチェックしてもらったわ。
バストやお尻がハミ出すのは嫌だもの。
でも撮影が進むにつれ、あのセクシー衣装が第2の肌みたいに思えてきたわ(笑)。
女子軍団も嬉々として演じたとわかる。
百合という同時多発テロ。
さあ、世界をくまなく百合色に染めろ!
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