シティ・オヴ・金子信雄
おなじみの企画、「ブログ DE ロードショー」の時間がやってまいりました!
今回はhiroさんがえらばれた『シティ・オブ・ゴッド』(2002年)で、ボクは初見です。
好みからいうと甘口すぎるけど、よくできた青春映画だとおもいます。
リオデジャネイロのスラムで、ガキ同士がバンバン撃ちあうお話。
日本のヤンキー漫画にちかいかな。
『ビー・バップ・ハイスクール』、『BADBOYS』、『クローズ』など。
ケンカ、ケンカ、ギャグ、ケンカ、ケンカ、恋愛、ケンカ、ケンカ……。
悪童が明けても暮れてもゴロをまき、勝った負けた死んだの大騒ぎ。
地球の裏側でも、同様の需要があると知って嬉しくなりました。
「ええかげんにせえよ! 銭になりもせんことしやがって」
山守組組長・山守義雄が毒づく。
金子信雄が演ずる、『仁義なき戦い』シリーズ(1973~74年)の中心人物。
子分が組のため体を張ってもこれだから、最低の男です。
脅迫、懐柔、追従、買収、虚言、扇動、
進退きわまれば、恥も外聞もない泣き落し。
あらゆる手練手管をもちいて、広島ヤクザの頂点にたつ。
そう。
『シティ・オブ・ゴッド』には、金子信雄がいない。
組織を運営するには、なにはさておき資金がいる。
表社会だろうと、裏社会だろうと。
定期的な融資や資金洗浄のためには、銀行か、どこかの金持ちに頼らねば。
麻薬を売るには、業者から仕入れなければ。
武器もタダでは手に入らない。
強盗をしたら、盗品を捌いてくれる人間が必要だ。
ガサ入れを避けるため、警察に渡りをつけなくてはやってゆけない。
銃を何丁持ってようが、子どもだけでシノギができるものか!
『シティ・オブ・ゴッド』には出てこないが、もしあれが実話に近いなら(かなり怪しい)、
カメラの背後で、ブラジルの金子信雄が暴利を貪っている。
狡猾な親分・金子信雄に操られ次々に犬死にしてゆく仲間たち。
けっきょく、戦争さえなければ堅気だったろうヤクザのアマチュア“焼跡・闇市派”の連中は、
根っからのプロ・金子信雄にしてやられる。
それは“大義”のために戦死・戦災死していった大正一ケタ&昭和一ケタの若者たちと、
おのれは信じてもいない“大義”を錦の御旗に甘い汁を吸っていた明治男の職業軍人
……という大東亜戦争の構造と二重うつしになってくる。
この大作に傑出した脚本を提供した笠原和夫もまた焼跡で野良ついていた男だった。
丹野達弥
川本三郎・編『映画監督ベスト101 日本篇』(新書館)
戦争に翻弄された男たちの、鬱屈したエナジーが暴発する。
観客は銀幕にうつる嘘をみのがさない。
だからこそ『仁義なき戦い』は、何十年たってもボクらを感動させる。
くらべるのは気の毒な、『シティ・オブ・ゴッド』のカントクさんです。
フェルナンド・メイレレス、公開当時四十七歳。
サンパウロ大学で建築をまなんだ。
文盲のガキの気持ちなどわからないし、むこうも理解されたくないだろう。
ちなみに父は医者、妻はバレリーナ。
のう、メイレレス。
おどれがスラムの何を知っとんじゃ?
ママゴトみとうな映画作ってからに、ハジキぶちこんでこますぞ!
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