『ザ・タウン』
ザ・タウン
The Town
出演:ベン・アフレック ジェレミー・レナー レベッカ・ホール ジョン・ハム
監督:ベン・アフレック
制作:アメリカ 2010年
[ユナイテッド・シネマとしまえんで鑑賞]
《注意》
以下の記事では、物語の核心にふれています。
ボストンのバンカーヒル記念塔。
独立戦争の記憶をのこすため建てられた、アメリカ最初のオベリスクだ。
映画冒頭でうつされた瞬間、銀幕に電撃がはしる。
この物語には、核がある。
ボストン北東部チャールズタウンで、腕ききの銀行強盗一味が暴れる。
ゴムマスクごしの発声は、モゴモゴと聞きづらい。
まるで黒澤明の映画をみている様で、血がさわぐ。
犯行の手口の描写はあまりにくわしく、教科書として使われないか心配なほどで、
もはや強盗志望者にとつて、『ヒート』(1995年)はお払い箱になつた。
煉瓦の三階建ての街並み。
ノースエンドの道はせまく、曲りくねつている。
十七世紀にできた街だから、車の通行など想定していない。
それでも強盗はアクセルをふみこむ。
連邦捜査局(FBI)を撒くには、地の利をいかさなくては。
ボストン・レッドソックスの本拠地、フェンウェイ・パーク。
元締めのピート・ポスルスウェイトいわく、ボストンの「大聖堂」。
街の象徴を襲撃する映画に、撮影の許可があたえられたのは、
監督・主演のベン・アフレックが、レッドソックスの忠実なファンとして有名だから。
やはりこの物語には、核がある。
中央がスレイン、左手前がオーウェン・バーク
黒をまとうチャールズタウンの強盗団。
俳優が監督した作品のたのしみは、演技をじつくり味わえること。
役者はカメラのこちら側の同業者を信頼するから、面構えがちがう。
ジョン・ハムは、FBI特別捜査官の役。
FBIは地元の悪党から「フェッズ」とよばれ、蔑まれている。
連邦政府につとめる役人は、あくまでヨソモノ。
国家を意識するのは、オベリスクだけで十分だ。
……そんな空気がつたわる。
ジェレミー・レナーは、主人公の相棒。
たがいの人生の闇の部分まで知りつくした腐れ縁で、
あぶないヤマに手をだし、縺れあいながら破滅してゆく。
ベン・アフレックとの仕事は最高だった。
彼は自分も俳優だから、俳優が直面するであろう障害を、先にわかっているんだ。
それらを事前に取り払ってくれるんだよ。
映画プログラム
インタビュー・文:猿渡由紀
役者が尿意をこらえている様にみえたら休憩にするとか、
そういう気配りをアフレック監督はできるのだろう。
元締めポスルスウェイトの、表の職業は花屋さん。
剪定バサミの手つきがおそろしい。
そして、ふてぶてしい死にざま。
実人生でも、ことし一月二日に死去、享年六十四。
そのあつぱれな役者人生を、網膜に焼きつけた。
『ハート・ロッカー』では、激戦のイラクから生還したレナーだが、
本作では郵便ポストの脇で、みじめに蜂の巣となる。
だれに記念されることもなく。
なのに監督・主演者は、おめおめと逃げのびて不公平に感じるが、
おいしい役を同輩に譲つたともいえるか。
男の友情は、目立たない形であらわれるとき、一番うつくしい。
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