BOØWY『Marionette』

 

Marionette -マリオネット-

 

BOØWYの六枚目のシングル

 

作詞:氷室京介

作曲:布袋寅泰

発行:東芝EMI(イーストワールド) 1987年

 

 

 

オレはガキのころからロック一筋、なんて嘘をついてもバレなかろうが、

小学生のときにBOØWYは解散したので、リアルタイムでは知らない。

当時あこがれていたのは、中森明菜だ。

 

 

このバンドは、いま聞いても最高か?

後進に影響を与えすぎたせいか、音は錆ついて響く。

髪型や衣裳は恥づかしいし、氷室京介による歌詞は陳腐だ。

 

 

だがヴォーカリストのうつくしさは、時代をこえている。

いわゆるヴィジュアル系の始祖のひとりだが、

オカマ臭いフォロワーたちとは一線も二線も画す。

身長190cmの布袋寅泰ですら、数々の武勇伝をもつ氷室に恐れをなし、

バンド加入の申し出をことわれなかつた。

鏡を最良の友とするナルシストだが、数秒後にはそれを叩き割りそう。

前のめりの硬質なビートに、尖つた言葉をのせて射ち出す。

 

 

作曲と編曲は、ひとつ下の布袋寅泰による。

導入部のギターのリフが有名だが、これはサビの旋律そのまま。

あきれるほど素朴な構造をもつ曲だ。

 

 

いま聞くと、松井恒松(のちに常松と改名)が演奏の核だつたとわかる。

猛獣の首根つこをつかみ、地に捩じ伏せる様にベースをかかえ、

ひたすら黙々とダウンピッキングをつづける。

手負いの虎の唸り声を背後に聞き、バンドは速度をあげる。

 

 

だからニャンなのさ。

絶頂期に解散する潔さが、かれらを伝説のバンドにした。

その歴史をひもとくのは、もつれた糸を断ち切る様に簡単ではない。

オマエにBOØWYをかたる資格があんのか、と言われるのがオチ。

しかし、まだ奥の手があるんだニャー。

 

 

 

 

 

ユーチューブには、総数はとても確認できないほど多量の、

『Marionette』のカヴァーがアップロードされている。

夜更しして百種類くらい聞いたが、価値あるものは皆無にひとしい。

氷室布袋による再演ですら、そうなのだから!

二十年以上ギターをつづければ、アマチュアだつて上手になる。

しかし『Marionette』は、演奏者に技術をもとめない。

それは魂の問題だ。

女房や子供を食わせるため日々労働にいそしむ中年男が、

「自分のために踊りな」とか、哀れで身につまされるだけ。

 

 

こちらのTEJ0221氏は中学三年生。

ほそい!

オレもこの頃は、毎日ポテチを食つてもガリガリだつたな。

たしかにオッサンギタリストとくらべるとヘタだが、

かれの魅力は、Aメロでのリズムの刻みにある。

CDからひびく松井の低音に煽られ、つんのめる。

つまづき、足がもつれても、前傾姿勢をやめない。

わかるぜ、ロックにかけるその思い。

 

ジョン・テニエルによるジャバウォック

 

全世界が、敵にみえる。

教師には、殺意以外の感情をおぼえない。

趣味のあう友人は好きだが、自分が特別であると認めないのが不満。

父は、世界一ちつぽけな権力をもてあそぶ、世界一滑稽な独裁者だ。

母は、ヒステリックで不幸なケダモノ。

わかい女は、売女か豚のどちらか。

子供じみた偏見?

かもしれない。

なら、真実つてヤツをおしえてくれよ。

どうせアンタもオレも、鏡の世界にとらわれた囚人なのだから、

気分のままに踊るしかないだろ?

 

 

 

『Marionette』。

それは鏡の国に解き放たれた、ナンセンスの怪物ジャバウォック。

あらたな卵がいま、そこで、孵化しようとしている。


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