女とは ―― 『RED』
RED
出演:ブルース・ウィリス メアリー=ルイーズ・パーカー ジョン・マルコヴィッチ
監督:ロベルト・シュヴェンケ
制作:アメリカ 2010年
[ユナイテッド・シネマとしまえんで鑑賞]
けふは、堀北真希がでている『白夜行』にしようか迷つた。
土壇場で予定をかえたのは、本作を監督したのが、
『フライトプラン』(2005年)のロベルト・シュヴェンケと知つたから。
ジェット旅客機で、ニブそうな乗客のピーター・サースガードが、
いきなり航空保安官として牙をむく意外性。
ありふれた日常の、静謐な空間を転覆させる藝を、
このドイツ人監督がまた披露してくれるのでは?
ならホマキちやんはグッと我慢だ!
ブルース・ウィリスの住居に忍びこんだ暗殺者が、撃退される。
『RED』の粗筋は、引退したCIA工作員が古巣から狙われるというもの。
だから登場人物はジジババばかり。
ジョン・マルコヴィッチは、陰謀論に凝り固まつたサバイバリスト。
アメリカには、まつたく国家権力を信用せず、完全に自活する連中がいるときく。
こちらは老人ホームでの一コマ。
「アンテナをもうすこし左にしてくれ」と美声がひびく。
「うん、バッチリだ」
モーガン・フリーマンも元CIAだが、いまは介護士の尻をながめることが生きがい。
さすがは名優、最高の笑顔だ。
同盟国イギリスからは、MI6のヘレン・ミレン。
園藝をたのしみながら、悠々自適の暮しをおくる。
勿論サブマシンガンも、英国女性の嗜み。
「オンナノコ同士、たのしくお話しませう?」
スナイパーライフルをかかえて、ささやく。
このバアサンにはかなわんと呆れる、メアリー=ルイーズ・パーカー。
どうもデイム・ヘレンは、主人公のあたらしい恋人に妬いているらしい。
失礼ながら彼女は六十五歳なのだけど、
カワイイ女を演じるのが異様にうまいんだよなあ。
ボクは別に年上好みではないし、惚れてしまつてよいものかどうか。
おそらく映画史上、もつとも気品ある狙撃手だ。
標的を決めて銃を撃つというのは、思った以上に楽しいことだった。
私にはスナイパーが合っているみたい。
映画プログラム
取材・文:渡辺麻紀
アクション映画ファンなら誰でもしつているが、銃という小道具は、
ただ構えて引き金をしぼればよい物ではない。
うつくしくなければならない。
シェイクスピア劇にMP5はでてこないが、舞台経験が役だつたはず。
一番気をつけたのは銃を撃つとき、ヘンな顔をしないこと。
たとえ空砲であっても大きな音がするし、銃も動く。
そのときマヌケな顔をしていては、
プロフェッショナルという設定にはまったく似合わないでしょ。
M2重機関銃をブッ放す場面もよい。
カメレオンのごとく色をかえ、背景にとけこみ、隙あらば餌食をものにする。
女優という稼業は、狙撃手に似ている。
いや、女という生き物がそうなのか。
火の海と化す、地下駐車場。
女つて、こわい。
ホリキタなんて小娘のことは、すつかり失念いたしました。
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