イニシアティヴ ―― アジアカップ準々決勝 カタール戦

 

AFCアジアカップ2011 準々決勝 日本-カタール

 

結果:3-2 (1-1)

得点

【日本】29分・71分 香川真司 90分 伊野波雅彦

【カタール】13分 セバスティアン 63分 ファビオ・セザール

会場:アル・ガラファ・スタジアム

[テレビ観戦]

 

 

 

63分、吉田麻也にレッドカードが提示された。

左膝ををふまれた痛みにのたうつ、彼の目に映つてないけれど。

ペルシア湾に突き出た半島の国カタールのだれかが、

マレーシア人のスブキディン主審に、高価な鼻薬を嗅がせたとしても驚かない。

使い道にこまるほど金があれば、オレでもそうする。

われら庶民は貧乏だから、上司に中元や歳暮をとどけるくらいで済ますのだ。

 

 

サッカーなる競技は、プレイヤーに物理法則をこえた存在、

いうなれば天使であれと要求することがある。

全速力ではしる男の全体重が足にかかつても、微動だにせず耐え忍ぶべし。

だが吉田も、それを承知で職業をえらんだのだから、

同情の余地はあるにせよ同情しない。

一時間強にわたり、力技小技裏技でゆすぶられ、

青を身にまとう二十二歳は、すでに顔色をうしなつていた。

日の丸を胸に縫いつける男の顔ではない。

退場もやむなし!

 

 

つづくフリーキックは、川島永嗣がガッチリとめた。

網のなかで。

 

 

オレは黙々と仕事をするゴールキーパーが好きだ。

楢正剛とか松林美久とか。

川島は顔藝にたよりすぎで、見ていて落ち着かない。

 

 

 

 

 

サイドラインの外側から、自分のしでかした事の顛末をながめる。

顔面は蒼白なまま。

 

 

参謀本部に怠慢はゆるされない。

64分に岩政大樹をおくりこみ、守備陣の穴をふさぐ。

「かちかち山」の、泥船であわてるタヌキに似ている。

 

 

割りをくつた前田遼一。

逆に彼は、感情をもつと表に出せないのかな?

「けふのボクは連係がよくなかつたし、運動量のある岡崎や、

セットプレーの得意な本田は残したいから、交代も当然か」

……なんて考えてそう。

「ざけんなよ、オレ抜きで点が取れんのか!?」と、顔で表現すればよいのに。

 

 

……そういう人は、残したくなるからね。

沈没寸前の泥船をひきいる、聯合艦隊司令長官ザッケローニは無策だつた。

予備兵力の藤本・柏木・李らは優秀だが、その若さゆえ信頼できない。

かたむいた艦艇が、かえつて転覆しかねない。

 

 

 

 

 

なんと90分、右バック・伊野波雅彦が左足で得点。

 

 

現場の長谷部主将が、「なぜあそこにいたか分らない」と感想をもらすほどで、

六時間の時差をへだて観戦するオレは、テレビの前で目を白黒させるばかり。

しかしすぐ、あることに気づく。

 

 

四日前、ザッケローニ監督が布石をうつていたことに。

グループリーグのサウジアラビア戦、

7分に警告をうけた内田篤人が次戦の出場資格をうしなつたので、

はやくも後半開始時に伊野波を右バックで起用。

試運転なしで、真剣勝負をさせるのは不安だから。

カタール戦の90分間で打つ手はなくとも、計略はうごいていた。

 

 

90+3分。

184cmのディフェンダー永田充が、サイドラインの前にたつ。

オレはアドレナリンか何かのせいで、脳の中身がグチャグチャだつたが、

コーチのステファノ・アグレスティなど、幕僚の精勤ぶりに感心した。

対空兵器の投入は必要だし、時間稼ぎになるし、まさに最善手だ。

 

 

カタールに、空戦を挑みつづける以外の選択肢はない。

一方の日本は交代枠を温存しているから、

もし追いつかれても、延長戦でまた艦隊の進路をかえられる。

日本代表はこの日はじめて、主導権を手にした。

山のごとく不動であることによつて。

 

 

 

 

 

世界的に見てイタリアの指導者は守備重視で、自分たちの良さを出すよりも、

相手の良いところをつぶしていくというイメージが一般的だと思うが、

今日はそうではないイタリア人もいることを発信できたことはうれしく思う。

 

カタール戦後 ザッケローニ監督会見

『スポーツナビ』


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