天使に休息はない

『新世紀エヴァンゲリオン』(ガイナックス)

 

 

 

『残酷な天使のテーゼ』が名曲とはおもえない。

高橋洋子(歌唱)、及川眠子(作詞)、佐藤英敏(作曲)、大森俊之(編曲)。

それこそ残酷な言いかたをすれば、彼らのうちの一人も、

このアニメ主題歌以外で名を残しはしないだろう。

二流の人間が創造した、突然変異的な何か。

謎めいた使徒たちにも似て。

 

 

2008年4月にアップロードされた、エレクトーンによる『残酷な天使』の演奏。

 

 

カーゴパンツの「モトヒロ」さん、ブログのプロフィールに「男性」とあるが、

一人暮らしの女が、表札に父の名を記す処置にちかいと妄想している。

その白魚の様な指に、一目惚れしたから。

仮に男だとしても、膝まづき口づけしたい。

 

 

 

 

 

「残天」の最大の特徴にして、最悪の欠陥は、その歌い出しだ。

「ざーんーこーくーな、てんしのよぉに……」

トコロテンを押しだす様にゆつくりと、日本語教師の様にハキハキと。

高橋洋子の節回しは、あまりにクドい。

イントロが説明過剰で、本篇は惣流・アスカ・ラングレー並みのオマケになる。

では、省略したらどうなる?

「蒼い風がいま/胸のドアを叩いても/私だけをただ見つめて……」

Aメロの歌詞の陳腐さ!

八十年代のアイドル歌謡が、墓場から這い出てきた。

 

 

モトヒロ氏のカヴァーが秀逸なのは、

『魂のルフラン』からはじまるメドレー形式だから。

めざましい速度で、「残天」に突入。

門口にひそむ手強い使徒を、ロンギヌスの槍でつらぬく。

 

 

華麗なグリッサンド。

この動画は、撮影のアングルもよい。

陰の左足は、ペダル鍵盤の上で珍妙なタコ踊りをしているが、

湖面をすべる白鳥は、つねに優雅なまま。

 

 

 

 

 

サビにちかづき、孤独なオーケストラのパトスがほとばしる。

当時高校一年生だつた奏者は、左手が巧みだ。

下鍵盤はおもに装飾音を奏でるが、ときに右手より激烈。

パイロットを無視して暴走する、エヴァンゲリオン初号機のごとく。

 

 

特に「思い出を裏切るなら」での鋭いタッチ!

初号機の咆哮が、第3新東京市にこだまする。

オリジナルでは、ほとんど耳にのこらない音だが。

 

 

「カンペキ……」と内心でつぶやきつつ、ビデオを停止する。

楽器をひける人間に嫉妬をおぼえる瞬間だ。

多分彼らは、一種の天使なのだろう。

メドレーという変則だが、原作アニメへの深い解釈をしめす点で、

高橋洋子の原曲をも越える名演と断言したい。

これぞ「セカンドインパクト」だ!

 

 

 

 

 

2010年が、平穏無事に終ろうとしている。

悪い意味で。

ボクはもう少年ではないから、天使にはなれない。

それでも傍観者として、欲得づくで、鬱屈し、血にまみれ凄惨で、

ゆえに震えるほど美しい神話を、あくる年も紡いでゆくつもりだ。


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