ブーイング ―― 天皇杯 二回戦 町田ゼルビア-東京ヴェルディ

 

天皇杯 二回戦 FC町田ゼルビア-東京ヴェルディ

 

結果:1-0 (0-0)

得点:73分 山腰泰博

会場:西が丘サッカー場

[現地観戦]

 

 

 

ヴェルディ側のゴールの後背から、藤田と木島への拍手がおこる。

かつての在籍選手が下位リーグで奮闘していることに、

いまは敵対する立場とはいえ、敬意を表したのだろう。

日が落ちても摂氏三十度を下まわらない、

ぬるま湯みたいな空気がくすぐつたくて、ボクは身悶えした。

相馬直樹が指揮する、町田ゼルビアの攻勢の犀利さを、

緑のサポーターは一度も見ないまま、無防備なほほえみを曝している。

相馬監督に対してまで、再会を祝すのにあきれた。

二〇〇二年に一年在籍しただけなのに、律義なことだ!

ゼルビアの観戦はひと月ぶりだが、その哲学はさらに精度をたかめ、

洪水のごとく平原を洗いながし、なごやかな気分を一掃した。

優雅なる独裁者・太田康介が、攻防のすべてを差配する。

斎藤広野が敵の右わきをえぐり、刺傷をおわせ、出血をしいる。

愚かにも以前ボクが扱きおろした深津康太は、

あの秋田豊より荒々しく、平本一樹との空戦を制した。

 

 

 

 

 

「daysworld9」氏がアップロードした動画。

撮影者自身の絶叫からわかるとおり、日本サッカー史の、

二〇一〇年の項目に大書すべき得点だ。

 

 

左側面でねばる勝又がのこしたボールを、太田が直にはたく。

太田、ここでも太田。

 

 

太田がキックで不覚をとれば、むしろその稀少価値によろこびたくなる。

それにしても、ヴェルディに退場者が出ているとはいえ、

誰ひとり足をとめないゼルビアの前傾姿勢がここちよい。

 

 

ボールと人が錯綜するなか、山腰の鼻のさきに好餌が。

 

 

百七十七センチ、七十五キロのすべてを乗せて、右足をふりぬく。

ゴールまえの人数は、ゼルビアが三、ヴェルディが二。

左に太田康介が長駆しているのも、見逃せない。

 

 

青の9番が、土肥洋一をやぶる。

 

 

おもえば河野広貴が退場となり、かえつて平衡が保てなくなつた60分、

相馬監督は山腰をおくつて、3トップで苛烈に攻めたてた。

山腰のシュートはチーム最多の四本、うち一得点。

いつもながら、憎らしいほど時宜にかなう判断だつた。

 

 

 

 

 

一仕事おえて家路をいそぐ審判団に、ゴミの雨がふる。

ヴェルディファンを喜ばせるため出資する企業が見つかることを、

ボクは切にのぞむけれど、先行きは明るくなさそうだ。

四週連続で西が丘に通い詰めたからわかるが、

このスタジアムのゴール裏は観覧にむかない。

『リベログランデ』(ナムコ)より劣悪な視界なのだから!

だがサッカーのスタジアムには、ワラジムシが多数生息している。

石の下にかくれ、なにも見ず、なにも考えず、ただ群れをなし、

ちつぽけな領土を支配することにしか興味がない。

 

 

この日の朝、Jリーグから「入会予備審査」ではねられたという一報をきき、

青い観衆がどれほど嘆いたか、緑の観衆はすこしでも思いやつたのか?

涙をこらえ、屈辱に耐えながら、小田急線にゆられて来たことを。

上位リーグ所属のくせにブーブー騒ぎ、嘔吐をもよおす見苦しさだつた。

ブーイングが悪いとはいわない。

うつくしくはないが、まあ男同士なら黙認してもよい。

ただ、その方向がまちがつている。

試合まえ、相馬直樹をよぶ声を怒号で掻き消していれば、

勝利の確率は数パーセントあがつたかもしれない。


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