『ゴッドファーザー』に酔う

 

ゴッドファーザー

Godfather

 

出演:マーロン・ブランド アル・パチーノ ジェームズ・カーン

監督:フランシス・フォード・コッポラ

制作:アメリカ 一九七二年

 

 

 

職業で人を差別するのは野暮だが、葬儀屋のボナセーラは、

娘の結婚式にあまり招きたくない客のひとりだ。

 

 

ながながと自分の娘が乱暴される様子をかたり、

名づけ親のドン・コルレオーネに復讐をこう。

頼みごとをするにしても、もうすこし日を選ぶべきだが、

それでも昔かたぎのヤクザは、来るものを拒まない。

 

 

怒りと悲しみで嗚咽する葬儀屋にむけて、手をさしだす。

肩をだいて慰めるのが、無難な応対だろう。

 

 

しかしボナセーラにあたえられたのは、ちいさなグラス。

現実のやりきれなさを中和する解毒剤として、一杯の酒に勝るものはない。

 

 

猫をだくヴィト・コルレオーネ。

かれ自身は、さほど酒をたしなまない。

一秒たりとも止むことない憎悪の嵐のなかで、

心身を酒精にゆだねる余裕のない人生だつたから。

かれのもとに集う人間は仔猫の様なもので、一家の長の庇護を必要とする。

 

 

 

 

 

左の恰幅のよい男が、ドン・ヴィトの腹心といえるクレメンザ。

その風貌も、粗野なふるまいも、あまりに典型的で、

「イタリア系アメリカ人」というより、「イタ公」とよびたくなる人物だ。

 

 

踊りつかれたので、若い衆をよぶ。

おいポーリ、ワインをもつてこい!

 

 

喉の渇きをいやそうと、ピッチャーから葡萄酒をガブ飲み。

熱中症対策の観点からみると最悪で、

厚生労働省から苦情が寄せられてもおかしくない映画だ。

のちに裏切りが発覚し、手前の三下のチンピラは、

クレメンザによつてあつけなく殺される。

 

 

 

 

 

コルレオーネ家の三男坊に料理をおしえるクレメンザ。

「まずオイルでニンニクをいためて、トマトをぶちこむんだ。

かたまらない様によくまぜろよ。

それからミートボールとソーセージをいれる」

 

 

「……で、ワインを少々」

「少々」のはずだが、巨大なボトルを急に傾ける。

入れすぎかもしれないが、どうせ食卓でも飲むから同じことだ。

要するにメシなど、うまければそれでよい。

 

 

ノンキに料理教室をひらいてる場合かと、長男のソニーが小言をいう。

父が撃たれたあと、かれが一家の指揮をとる。

「ポーリの件はどうしたんだ?」

 

 

「ポーリか、ヤツならとつくに消えたぜ」

こともなげにつぶやくクレメンザに、武闘派でならすサンティーノも鼻白む。

ヤクザ稼業の物騒さがつたわる、本作でもつとも怖い場面かもしれない。

数時間まえの殺しよりも、うまいメシや、

美女を口説くことの方が、イタ公にとつて重大事なのだ。

 

 

 

 

 

一家をひきついだ三男坊マイケルの妻、ケイ・コルレオーネ。

旧姓の「アダムズ」からわかる通り、彼女はイタリア系ではない。

父の仕事が嫌いで、カタギの世界で成功したかつたマイケルにとり、

ケイの存在は、「アメリカの正義」を体現するものだ。

「マイケル、あなたが殺したというのは本当なの?」

 

 

「いや」

「よかつた……」

ケイ自身、どこまで本気で信じていたかわからないが、

夫婦の絆はこの時点で千切れるのをまぬがれた。

新妻は騙されたわけだが、彼女のゆるぎない瞳にみつめられ、

真実をつげる勇気をなくした夫の方が、より滑稽なのはたしかだ。

 

 

「ねえ、ちよつと飲みません?」

すこし安心して、水割りかなにかをつくりに出たケイと入れ替わり、

クレメンザなどの「ファミリー」が部屋にはいつた。

マイケルの手の甲に口をつけ、誓いの言葉をのべる。

 

 

おびえた仔犬の様な面持ちのケイ。

その酒は、どんな味がしたのだろうか。






 

ヘイゲン



さて、「ブログ DE ロードショー」第十二回はお楽しみいただけましたか?

みなさまの感想を拝見するのを心待ちにしております!

今回の記事も、miriさんが『映画鑑賞の記録』でまとめてくださるので、

是非そちらで色々な意見にふれてみてくださいね。



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