『きな子 見習い警察犬の物語』
きな子 見習い警察犬の物語
出演:夏帆 寺脇康文 戸田菜穂 大野百花
監督:小林義則
制作:日本 平成二十二年
[丸の内ピカデリーで鑑賞]
瀬戸内海にのぞむ、香川県の警察犬訓練所を舞台に、
虚弱なラブラドール・レトリバーの「きな子」と、
ドジな見習い訓練士の「杏子」の、ゆるやかな成長をえがく物語だ。
主役をつとめる夏帆。
CMやティーンむけのファッション誌のモデルとして活躍した、十九歳です。
姓が「夏」で、名が「帆」なのかな?
おつと失礼、こちらが夏帆さんでした。
犬と飼い主は似るというが、数あるイヌ映画のなかで本作が出色のデキなのは、
イヌ顔の女優を主演にすえたことが理由だろう。
ちなみにボクはネコ顔の娘さんに目がないのだが、
ラブラドールとの取り合わせで、手足のひよろ長い彼女を好きになつた。
訓練中に叱るときでも、よくもわるくも愛嬌がある。
得な顔立ちにちがいない。
今度は自分が、所長の寺脇康文に一喝される。
観客としては、泣いてあやまる小芝居を期待するぢやない?
美女の涙ほどうつくしいものは、そうないのだから。
所長にはわからんと思います!
がんばつてもがんばつても、できんモンの気持ちなんか……。
夏帆ちやん、逆ギレ!
犬たるもの、メソメソ泣き濡れるのは似あわない。
ラブラドールになりたい……ぢやなかつた、配役の難点をひとつ挙げるなら、
彼女はこれまで犬を飼つた経験がないということだ。
このコダワリのなさが、邦画の一番ダメなところ。
愛犬家をなめるな。
犬と人間の信頼関係、それは数日で理解できるものではない。
抱きかたをみれば、飼育経験の有無など一目瞭然だ。
無論これは、夏帆の責任ではないけれど。
嵐のなかを疾走する、見習い警察犬。
本能むきだしの迫力が、感動をよぶ。
それもそのはずで、コンクリートをはしる場面は一発撮り。
何度もくりかえすと、犬は足の裏を痛めてしまうから。
かたい舗装路をはしることが、もつとも彼らの負担になるのだ。
ウチで飼つていた柴犬は、あるとき骨折していたのに、
鈍感な父は気づかず自転車で引きずりまわしたが、
ヤツは痛みをこらえて尻尾をふりふり、大喜びでお伴をしたらしい。
泣きたくなるほど、健気な生きものなんだよねえ。
手前は、所長の娘役の大野百花。
おそるべき毒舌家で、夏帆と寺脇康文はかなり、
母役の戸田菜穂は完全に、八歳の女優に食われていた。
アクセントが巧みなので地元の子かとおもつたが、実は東京うまれ。
「動物と子役にはかなわない」という凡庸な格言が、
どうやらこのエントリの結論になりそうです。
犬もあるけば棒にあたる、ということでお許しくださいね。
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