Sing Like Talking『RISE』

 

RISE

 

Sing Like Talking(シングライクトーキング)の

アルバム『Humanity』収録曲およびシングル曲

 

作詞:藤田千章

作曲:佐藤竹善

発行:ファンハウス 平成四年

 

 

 

寝苦しい熱帯夜は、吹雪みたいに空調をきかせたフロアで、

踊り明すのが理にかなつている。

酒、タバコ、闇に浮んでは消える女たち。

五感を麻痺させる高デシベルのビートが、暑中の憂さをふきとばす。

熱心にステップを踏みながら、汗一つかかず涼しげな、

『THE IDOLM@STER』のアイドル候補生たちの様に。

 


 

「バナールP」がニコニコ動画で公開している、アイマスMADだ。

Sing Like Talkingの名曲『RISE』にあわせ、マリオネットが踊る。

 

 

SLTのライブではおなじみの、天を指さすポーズ。

動画製作者の原曲への思い入れを感じる。

 

 

アイマス化された『RISE』の意外性に驚愕したが、

ショートカットの菊地真が、雰囲気になじんでいるのに震えた。

女らしい体臭をかけらも匂わせないくせに、やたらと艶かしく、

おまけに数秒ごとに視線をなげて、駆け引きをしかける。

光と闇のはざまで。

 

 

 

これに似た曲、どこかで聞いたことある!

そう思つたなら、あなたは耳がよい。

おそらくドリカムの『決戦は金曜日』が、それだ。

SLTの佐藤竹善とドリカムの中村正人は、

シェリル・リンのディスコ・クラシック『Got to be real』をネタにして、

どちらがよい曲をかけるか勝負した、という話がつたわつている。

売り上げはドリカムの圧勝だが(SLTはシングルヒットが皆無)、

曲の出来はどうだつたのか、十八年の時をさかのぼり判定しよう。

 

 

音楽番組「FUN」から。

 

 

おクスリが好きな人と、ダチョウ倶楽部のリーダーにはさまれ、

平成の歌姫が大きな口をさらにひろげる。

「ドリカム現象」なんて言葉がささやかれ、

女一人男二人でつるむのが先端的とされた時代。

たしかに若い娘の欲望を、性的な部分もふくめて、

大きな口で大らかに肯定する吉田美和の歌いぶりは新味があつた。

 

 

司会者までドリカム現象。

クルマとユーミンが好きな人と、ダウンタウンの腰巾着にはさまれ、

嫁入りまえの藤原紀香がクネクネとおどる。

神戸あたりでブイブイいわせた記憶が呼び覚まされたのか。

 

 

挙句のはてに、自分が主役といわんばかりの大熱唱!

自他ともにみとめる美女なのに、どうも滑稽なひとだ。

 

 

ドリカム現象の反響のすさまじさに、苦笑を禁じえない歌姫。

結論をのべると、『決戦は金曜日』はわづかに劣るとおもう。

この曲の吉田美和は歌いすぎで、木に竹をついだ様なブサイクさがある。

ダンスフロアに、フツーの女のコのリアルな感情なんて邪魔なだけ。

踊るアホウに、見るアホウ。

音楽が無内容であればあるほど、夢中になれる。

歌声なんて、楽器のひとつにすぎない。

 

 

 

 

 

アイマスのヒロイン格の天海春香は、本来は夜の盛り場など似合わないが、

丹誠こめてつくつた動画のなかでは、ディスコクイーンにみえる。

理想の女を追い求めれば、その姿は人形にちかづく。

自己主張なんて、こんな季節は特に鬱陶しい。

無表情で踊るくるみ割り人形をみて、男は想像をふくらませ、

あとはひたすら夏の夜の夢におぼれる。

 

 

佐藤竹善の声は安定感バツグンで、いかにも楽器の様だし、

藤田千章の歌詞も、どこかのクラブでいま起きている、

ありふれた一コマをスケッチした造作ないものだ。

無内容といえば、無内容。

なのにこの印象のあざやかさは、なんなのだろう。

人の海のなかをすり抜けてゆく、一匹のうつくしい魚。

ほかの漁師の手におちるまえに、とらえたい。

それが罠だと、うすうす気づいていても。

刹那的で頽廃的な、ダンスフロアのさめた興奮をとじこめた、

『RISE』という曲には、いまだ人を酔わせる魅力がある。





SECOND REUNION~The Best Of Sing Like TalkingSECOND REUNION~The Best Of Sing Like Talking
(1998/09/30)
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