『孤高のメス』

 

孤高のメス

 

出演:堤真一 夏川結衣 余貴美子

監督:成島出

制作:日本 平成二十二年

[ユナイテッド・シネマとしまえんで鑑賞]

 

 

 

本作は医療ものの映画なので、当然手術の場面がウリだが、

主役の堤真一より、敵役の生瀬勝久によるオペが印象にのこる。

ドタバタして、ホラー映画よりこわい。

手術室は戦場だ。

生死のベクトルが逆なだけで。

また堤真一も、ありがちな天才外科医ではない。

仕事中にながすBGMは、都はるみ。

原作の小説にある設定だとおもつてたら、プログラムによると、

成島監督が現場でためした演出なのだとか。

それこそ天才的な着想だ。

「オペは忍耐が大事だから、演歌があうんだ」と、

同僚に辨明するときの茶目つ気といつたら!

 

 

 

 

 

夏川結衣は、三四本目の腕となり医師をささえる。

きりりと釣りあがる眼、きよらなうなじ。

まさに白衣の天使だ。

女ひとりで息子をそだてる母でもあり、キャピキャピしたコスプレ臭は絶無。

ただひたすら勤勉で忠実で、うつくしい。

外科医長の堤真一に、ほのかな恋心をいだいている様だが、

彼女自身がその思いに気づいてなさげで、それがまた切ない。

一世一代の名演ではなかろうか。

 

 

 

 

 

『ディア・ドクター』では看護婦に扮し、ニセ医師をひきずりまわした余貴美子は、

本作ではわが子をうしなう悲しい役どころ。

ただ立場はいづれにせよ、いまの邦画に君臨する女王なのはかわりない。

観客はやすんじて、感涙にむせぶことができる。

 

 

撮影監督の藤澤順一は、丁寧な仕事ぶりだ。

ありふれた市立病院が、まるで城塞の様にたたずむ。

どこか不吉な、その威容。

おもえば病院は、われわれを病魔からまもる最後の砦でもある。

 

僕も赤ん坊の頃から毎日のように一緒にいた

大好きな叔父さんを手術の事故で失った。

メスによって「殺された」のに医師と病院は

絶対に責任を取ろうとしませんでした。

その時の感情が蘇ってきて胸がムカムカしてきました。

どうしたらいいのかまったく見えていなかったけど、

当麻のような医師を描いてみたい、と思いました。

生々しい「怒りと悲しみ」がこの映画作りの原点でした。

 

映画プログラム

成島出監督へのインタビュー

 

役者と裏方の本気が、火花をちらしつつ鎬をけづり、

見るもの臓腑をはげしくゆすぶる傑作だ。


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