ドゥルー・バリモア世代 ― 『ローラーガールズ・ダイアリー』

 

ローラーガールズ・ダイアリー

Whip It

 

出演:エレン・ペイジ マーシャ・ゲイ・ハーデン クリステン・ウィグ

監督:ドゥルー・バリモア

制作:二〇〇九年 アメリカ

[TOHOシネマズ シャンテで鑑賞]

 

 

 

縁があつて、よくテレビに出ている男の子と話したことがある。

おもわず見とれる美少年だが、その顔に不幸の陰がきざしていた。

子役ほど、子供らしくない子供はいない。

年相応に見えても、それは大人が期待する「コドモ」の役を演じてるだけで、

「本当の自分」は別のどこかにいるが、その場所を自力でさがすには幼すぎる。

だれも助けてはくれない。

オーディションで落とされるのもつらいが、

むしろ子役として成功すればするほど、彼らはより不幸せになる。

ギョーカイ人がチヤホヤしてくれるのに、

いまさら学校の勉強や、友人との遊びなんてバカらしくて。

そもそも周りが、自分を「ゲーノー人」としてしか見ない。

そして年齢が「子役」にふさわしくなくなつたとき、世界が崩壊する。

ただひとり、傷ついた心をかかえて。

 

 

 

 

 

一九八二年の映画『E.T.』の撮影風景。

左がスピルバーグ監督、右が六歳のドゥルー・バリモア。

監督はよい映画をつくろうと力をつくしただけだが、

完成した作品は、金髪の美少女を破滅にみちびいた。

くわしくは知らないが自伝によると、九歳で酒、

十歳でタバコとマリファナ、十二歳でコカインに手をだし、

子役の定年となる十四のとき自殺をはかるが、これは未遂におわつた。

母とは絶縁し、いまだ和解できてないらしい。

以上は、ドゥルー・バリモア監督作『ローラーガールズ・ダイアリー』を、

深いところまで理解するのに、欠かせない情報です。

 

 

 

 

 

「カナダの蒼井優」ことエレン・ペイジは、テキサスの田舎町でくらす地味な十七歳。

 

 

偶然みかけたローラーゲームの選手の姿に衝撃をうけ、

自分もスケーターとして試合に出ようと発心する。

しかし古風で石頭のママが、許してくれるはずがない!

 

 

母役のマーシャ・ゲイ・ハーデンと、妹役のユーレイラ・シール。

ママがなにより情熱をかたむけるのは、地元の美人コンテスト(ビューティ・パジェント)で、

娘二人をかつての自分とおなじ様に、優勝させること。

ミスアメリカを夢みるオシャマな妹は、巨大なトロフィーを獲得するが、

不器用な姉はカラッキシで、怒られてばかり。

それにしてもユーレイラちやんは、『E.T.』のガーティみたいに愛くるしい!

実はこの画像のふたりは、本当の親子。

ママと一緒で安心だから、あんなにイキイキしているのだ。

子役で苦労したバリモア監督の優しさが、銀幕からつたわる。

 

 

帰りの車内でお説教。

この構図は、子供のころの監督の胸中そのものだろう。

左が「子役」としての自分、右がママの「期待」。

仕事は嫌いではないし、現場で大人に褒められれば嬉しい。

なによりママに喜んでもらうのが、わたしの一番の望み!

でも「本当の自分」は、後部座席にいる。

気持ちをどう表現すればよいかわからず、途方にくれながら。

 

 

 

 

 

親にかくれて古いスケート靴をもちだし、チームにくわわる。

 

 

コーチもおどろくスピード。

 

 

なんだ私つて、ローラースケートが得意だつたのか!

自分から挑戦してみて、はじめて気づいた。

 

 

バンドをやつてる、イケメンの彼氏もできたりして。

楽しいこと、幸せなこと、身近にこんなに隠れてたんだ。

やりたいことをやるだけで、世界はこんなに違つて見えるんだ。

 

 

 

 

 

個性あふれるチームメイト。

ちなみにバリモア監督の藝歴は三十五年で、年齢とおなじだ。

生後十一か月のころから仕事をしているから。

なので初監督作でも、配役や演技指導の腕前については、

だれもケチをつけられそうにない。

特にたよれる先輩、クリステン・ウィグ(後列左端)がよかつた。

 

 

エレン・ペイジとじやれあう。

妹分の魅力を引き出してあげたい、という思いが感じられる。

本作はお気楽なコメディで、爽快感のあるスポーツ物だが、

それでもあちこちでホロリとさせられる。

 

人生とは、愛であり、笑いであり、友であり、

そしてそれを手に入れる過程で得る家族からの支えであると思う。

つまりこの作品なら、そのすべてがローラーゲームという

すごくユニークな背景の中で描けると思ったの。

私が語りたかったテーマが、

ここにはまるで惑星が一列に並ぶように完璧に揃っていたの。

 

映画プログラム「ドリュー・バリモア インタビュー」

取材・文:中村明美

 

ドゥルー・バリモアにとつて「母と娘の関係」は、ありふれた主題ではない。

どれだけ華やかな業界にいても、夜ごとに彼女をなやませ、

そのたびに身を切られる様な痛みをおぼえる話だろう。

それでも元子役は、それなりに経験をつんで、

ようやく自分自身の心に向きあう勇気をもてた。

 

 

プレミアでスピルバーグ氏と肩をならべる。

今度のツーショットは、「同業者」として。

なんとも感慨ぶかい。

ボクらは『E.T.』みたいな大がかりなファンタジーをみて育つたのに、

現実世界は年々ひどくなる一方で、丸眼鏡の爺さんにだまされた気もする。

でもいまだに心のどこかで、さすがに異星人ではないにせよ、

奇跡が世界の片すみで起きるのではないかという、希望をすてられない。

そんなボクは「ドゥルー・バリモア世代」の一員なんだと、ふと気がついた。


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