『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』

 

カラヴァッジョ 天才画家の光と影

Caravaggio

 

出演:アレッシオ・ボーニ エレナ・ソフィア・リッチ ジョルディ・モリャ

監督:アンジェロ・ロンゴーニ

制作:イタリア 二〇〇七年

[銀座テアトルシネマで鑑賞]

 

 

 

藝術家の伝記映画は駄作ばかりと、相場がきまつている。

その理由は、論理的に説明できる。

藝術家を題材とする作品は、それ自体の藝術性がとわれるから。

たとえばピカソの映画をつくるなら、ピカソなみの才能が必要で、

要するに、ボンクラがつくつたピカソの映画を見るくらいなら、

画集でもながめた方が、より作家について理解できる。

「あの傑作の裏には、秘められた恋があつた!」

だからなに、てなもんだ。

『ゲルニカ』をかいたのはピカソであり、彼の愛人ではない。

彼女らがほかの男とつきあつていたら、そいつが『ゲルニカ』をかいたのか?

噴飯ものだ。

おしなべて藝術家の人生は、孤独でみすぼらしいもので、

とてもではないが映画の題材にはむかない。

 

 

 

本作の主人公、「カラヴァッジョ」ことミケランジェロ・メリージは、

意外にも藝術家らしい藝術家として銀幕にあらわれる。

川辺でみつけた、真つ青に変色した腐乱死体に執着したり、

公開処刑で罪人の女が断首されるのに興奮したり。

鑑賞する前は、彼の男色趣味をながながと語られるのをおそれたが、

閨での出来ごとはさらりと流す、外連味のない筋立てがよい。

男に手を出すこともあつたかもしれないが、

それは娼婦を買う金がないからで、作家の本質にはかかわらない。

 

 

娼婦フィリデ役のクレール・ケーム。

「高級娼婦」という言葉のひびきに滅法よわい管理人としては、

画像を掲載しないわけにゆかないと、必死で検索しました。

このかたも、いくつかの絵のモデルになつてます。

 

『ホルフェレネスの首を斬るユディト』(一五九七年ごろ)

 

おもい剣を片手に、長時間ポーズをとらされたクロウト女が、

「もうやつてらんないわ!」とマジギレするさまが素敵だつた。

画題もふくめ、たおやかな恋愛の情緒からほど遠く、

だからこそ、「教皇と娼婦の街」であるローマの空気を感じとれる。

 

 

 

この映画の実質的な演出の担当者は、

撮影監督のヴィットリオ・ストラーロだといえそうだ。

全編にわたり、絵画の様に計算しつくされたショットがつづく。

カラヴァッジョの明暗法を模した、ほのぐらい光景にみとれるうち、

観客はいつのまに、画家が幻視した世界にとりこまれる。

ストラーロによるカラヴァッジョ評が興味ぶかい。

 

また不思議なことに、彼の絵画は青をほとんど使っていません。

これはわたしの勝手な解釈ですが、

青色は彼にとっては聖性を表す色だったのではないでしょうか。

ところが彼の作品は市井の人々をモデルにしたリアルなものが多い。

彼は闇の対比としてのみ聖性を描いたので、

青を使う機会が少なかったのではないかと思います。

 

プログラム「ヴィットリオ・ストラーロ インタビュー」

取材・文:佐藤久理子

 

青は聖なる色だから、あえて使わない。

なるほど、さすがにえらい先生は着眼点がちがう。

作品についてよりも、警察や裁判の記録の方が多くのこる、

無法者のカラヴァッジョは、イタリア各地を荒らしまわつた挙げ句、

死体となつて、トスカーナの砂浜にうち捨てられる。

発見されたときは、青色に腐りはてていたかもしれない。


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