アンガルド ― 森島明子『半熟女子』

 

半熟女子

 

作者:森島明子

発行:一迅社 平成二十~二十一年

[百合姫コミックス・全二巻]

 

 

 

 

「女らしさ」を題目に、底の底まで潜心する傑作。

女の子らしさ。

ときに綿毛の様につかみどころがなく、ふわふわと浮遊し、

ときに投げだしたくなるほどの重荷となる概念。

「佐倉八重」と「早水ちとせ」、ふたりのヒロインをのせて、

ゴンドラははげしく上下動する。

 

 

本作の種あかしをする、第一巻三十八ページ。

筆ペンでムカッ腹をたてるおチビさんが「八重」で、

男役の自覚が絶無の黒髪が「ちとせ」。

 

 

女らしさの本義は、見せかけにあるのではない。

内と外にひきさかれた、八重のかかえる矛盾がその証拠だ。

木の葉を森にかくす様に、「桃山女子高等学校」に入学する。

「自分が変われるわけぢやないけど、まあ多少は気がラクだわ」。

 

 

柳眉がりりしい、早水ちとせ。

幼稚園からずつと女子高で、家では五人姉妹の末つ子。

花園にあつて、草花がおのれを植物だと省察しない様に、

男の視線を気にすることなく、のびのびと育つ。

女を、女だらけのシャーレで純粋培養すると、男みたいに発達した。

フェンシングをやつているのも意味深長だ。

 

 

八重に基本動作の稽古をつける、うつくしい場面がこのあとつづく。

フェンシングの構えは「アンガルド」とよばれ、

腰をふかく落として剣をつきだす、独得の形のもの。

本邦の剣道より攻撃的で、そのくせ狡猾な印象がある。

 

 

 

 

血のながれない決闘を演ずるふたりだが、

物語がすすむにつれ、大胆な戦術をまなんでゆく。

窓が、象徴的にえがかれる。

 

 

本をもどすため、夜の図書室にしのびこむ。

そこでは先輩と女教師が、からみあつていた。

「さすがだね!大人だね!エロいねえ~!」と、ちとせ。

「し…信じられない」と、八重。

支流があわさり、河水はいきおいをまして、ふたりの成熟をうながす。

 

 

休日中の部活でケガをしたというメールをよんで、

私服のまま保健室へ急行した八重。

成長ぶりがうかがえる。

「ケガしたのに不謹慎だけど、

弱つているちとせつて、ちよつとだけカワイイ」。

 

 

ちとせがピンクを好きだとしつて、意外におもつたり。

「そつか、「女の子つぽい」モノにもいろいろあるもんね」。

 

 

終盤の名場面。

なりゆきではじまつた、八重の初恋の少女とのダブルデートで、

垂直落下系アトラクションにのる。

「ちとせが初恋」とウソをついた八重が、ギロリとにらまれる。

ちとせは、飾りけがなくて、いつもまつすぐ。

でも、相手のカレシの前だから気をつかつたと聞いて、納得。

それは、宙にうかぶゴンドラより不安定な関係だし、

「女らしさ」とはなんなのかも、わからないままだけど、

すこしも悲観することのないふたりに、勇気づけられる。






半熟女子 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)半熟女子 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2008/10/18)
森島 明子

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