チベットのサムライたち ― M・ダナム「中国はいかにチベットを侵略したか」

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中国はいかにチベットを侵略したか [原題:Buddha's Warriors]
マイケル・ダナム 著/山際素男 訳/講談社インターナショナル

雪山のくに、チベット
どこか日本ににている
うつくしい山の風景、趣向をこらした工芸品
仏教国であり、ながい鎖国を経験した歴史、それにダライ・ラマ信仰を中心にまとまった社会システムも、わが国と共通点がある
なんといっても顔つきがにている
そんなチベットのすべてを、すりつぶすように抹殺しようとたくらむひとびとがいる
中国共産党と、その追随者たちだ
無関心という雨戸をほんのすこしだけあければ、チベット人の運命は他人事におもえなくなるだろう
本書は、祖国をまもるためにちっていったブッダの戦士たちの物語

毛沢東は悪知恵だけはだれよりもはたらく男だ
まずは低姿勢にチベット社会にはたらきかける
僧、貴族、富裕な商人に金をばらまき、中共軍が進駐してもかれらの立場をまもると錯覚させた
その国に危機がせまっているとき、えてして上流階級は役にたたない
むしろ自分たちの既得権益をまもるために害をなす
そもそも中共軍がチベットに進攻した名目は、「チベットを帝国主義者から解放する」というもの
当時チベットにいた外国人は、ラジオ技術者や登山家などの欧米人がたったの8人
これでどうチベットを植民地化するというのだろうか
いまではわらうにわらえない冗談だ

支那にとってチベットがどういう戦略的価値があるのかはよくわからない
なんにせよ中共軍は本性をあらわにした
その蛮行についてここでくわしく引用する気にはならない
おれは人間の暴力性に関心をもち、すれっからしの読書家でもあるつもりだが、読みとおすのがつらいほどの残虐さだったとだけいっておこう
女性も、子供も老人も、僧・尼僧も無差別に、「死んだほうが何倍もまし」という恥辱をあたえて、そしてそのあと無残に殺した
ゆたかな文化をつたえる建築物、書籍、芸術品は灰燼に帰した
それでもチベット人はあきらめない
ふるい文化がのこっているせいなのか、かの国の男たちはサムライの精神をもっている
誇りたかく、銃や刀を愛し、絶望的な情勢でも勇敢にたたかう

ブッダの戦士たちを支援したのはアメリカのCIAだ
莫大な物資を投入し、チベット人をアメリカで訓練してゲリラ戦術をたたきこみ、B-17からパラシュートで祖国の地に降下させてたたかわせた
アメリカの「反共産主義」(なつかしいひびきだ)の国是にもとづく作戦にはちがいないが、とおい国のゴタゴタにこのんで首をつっこむアメリカの工作員たちもやはりすごいとおもう
とはいえ秘密作戦には限界がある
1969年、ニクソン−キッシンジャーは支那との国交樹立に合意
しょせんは米政府の一機関にすぎないCIAはチベットへの支援をうちきることになった
駐インド大使のガルブレイス(有名な経済学者)がそれを後押ししたとか
一般市民のあずかりしらぬ陰の工作活動などむなしいものだ

そう、ある国の悲劇については、その近隣国の政府がどうどうと責任をおわなくてはならない
そしてその責務をはたさなかったのが、インド初代首相のネール
インドにはたくさんのチベット難民がながれこみ、インド政府は中共軍の暴虐をよくしっていたのだが、ネールはもちまえの「友愛精神」にのっとり毛沢東を擁護
うわさが外国人メディアにもれないように情報封鎖した
亡命してきたダライ・ラマはうけいれたが、亡命政権樹立はゆるさなかった
チベット人の生死には無関心で、卑屈にも毛のごきげんとりに終始した
そんなこんなで1962年、中共軍は突如インドを侵略して純情可憐なネールはびっくり仰天
なんというグダグダな外交政策

後世の目からみて、当時の指導者の失政をあげつらうことはたやすい
そもそも関係者全員が幸福になる政治なんて不可能なのだし
それは現在の日本政府(笑)の対応、そして自分自身の言動をかえりみる材料としたい

中国はいかにチベットを侵略したか中国はいかにチベットを侵略したか
(2006/02)
マイケル ダナム

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theme : チベット問題について
genre : 政治・経済

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Author:ケン
男。ファミコン世代。
千葉市出身、新宿区在住。

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