愛 戦士 ― 青木愛衆議院議員をたたえる
『2ちゃんねる』「議員・選挙板」で公開された写真(撮影:sqE2g9Dg氏)
なんだかいつも落し物をしている気もするが、数年前、
ちかくのコンビニの外でキャッシュカードをなくしたとき、
女性の拾い主が、わざわざ自宅までとどけてくれた。
眼鏡をかけた、細身で小綺麗にした人。
正直いつて、不自然さは感じた。
銀行に仲介させ、ボクから電話するよう段取りをつける。
通例、そんな面倒な交渉はしない。
不調法ゆえ、なんの返礼もしなかつたが、
とりあえず丁重に感謝の言葉をのべた。
ひと月くらいたつたろうか、ふたたびドアホンが鳴る。
公明党のパンフレットをたづさえて。
それはないよ。
フェアぢやない。
礼儀知らずはおたがいさまだが、善意を投票権と交換しろなんて、
随分と人を馬鹿にした要求ではないですか?
創価学会の尖兵たる、婦人部に属するその人は、
交差点に落ちていたキャッシュカードを見たとき、
「一票ゲット!」と欣喜雀躍したのだろう。
そんな日常をおくれば、自身の人間性は摩耗する。
同情を禁じえない。
ウチは東京都第一区だが、けふは十二区の話。
北区全域と、足立区の一部をふくむ。
「自公連立の象徴」と言われる選挙区だ。
どうしても小選挙区から当選者を出したい公明党と、
一議席もゆづれない自由民主党が折り合つたのが、
いわゆる「コスタリカ方式」の選挙協力。
それから一悶着あつて、いまは公明党代表の太田昭宏を、
自民党が支援する堅固な体制をきづいた。
説明がややこしかつたですかね?
スミマセン、政治にはとんと疎いもので。
ただ、そんな複雑な背景にこそ急所がある、と看破した男がいる。
民主党代表代行・小沢一郎、その人だ。
まづは、彼自身が十二区から立候補する、というウワサをながす。
みえすいたハッタリだ。
作戦参謀が最前線で戦火にさらされれば、なにひとつ利などない。
それとも、意表をつく切り札をかくしているのか?
衆院解散の三日後、先月二十四日にようやく、
参議院議員・青木愛が同選挙区からの立候補を表明した。
当選回数は衆院一回、参院一回。
前回の衆院選では、落選も経験している。
政界にはいるまえの職歴は、
テレビタレント、シンガーソングライター、保育士などだが、
失礼ながら、どの職でも華々しい業績をあげてはいない。
なんだオザワの野郎、勿体ぶりやがつて!
こんな小粒の弾しかないのか。
さてはビビつて逃げたな。
そういつて、政敵は安堵のため息をもらした。
愚かなことに。
もし岩手の虎が侵攻したら、地元の自民党系組織は奮い立ち、
「反小沢」の旗のもとに結集したはずだ。
しかし、相手が元歌手のカイワコチャンでは、
古株の支持者でさえ、自民党に愛想を尽かしたのに、
まして公明党などに力を貸すわけがない。
これは、どうみても思うツボ。
「気弱な地上げ屋」さんのブログ、『ラ・ターシュに魅せられて』によると、
青木の出馬発表の翌日には、ポスター五千枚と事務所ができていた。
その智謀、湧くがごとし。
江戸川をこえてパラシュート降下した愛チャンは、
敵本営をはげしく攻めたてる。
短髪を汗でぬらし、濃紺のパンツスーツを皺だらけにしながら、
腕も折れよと握手をくりかえす。
北区と足立区のすべてのドブ板をひつくり返すいきおいで、
自分の顔と名前と人となりを、ひとびとの記憶中枢にきざんだ。
あせりはじめる公明党。
小選挙区にこだわり、比例代表の重複立候補をしなかつたから。
これが宗教政党の限界か。
現実世界にひそむ陥穽が、目にはいらない。
これも「気弱な地上げ屋」さんから教わつたことだが、
あわてて全国から、十二区の有権者と同数の信者を赤羽にあつめ、
「一人一殺」の覚悟で説得にあたらせたとか。
要するに青木愛は、敵の党代表を地元に釘づけしたうえ、
万余の援軍をおびきよせて、一網打尽にした。
御存知のとおり、太田昭宏を筆頭に小選挙区候補は全滅。
最高幹部八名が、国会から消えた。
自民党の得票にも、すくなからぬ影響をあたえたろう。
信じがたいほどの戦果だ。
東京や大阪にお住まいのかたは先刻承知のように、
ここいらでは、めつたに創価学会の悪口はいえない。
どこにこの非人間的組織の手の者がいるか、わからないもの。
だから、安穏とした参院議員の青木にとつて、
東京十二区で名乗りをあげるという決断は、
ワニ園の池に、ハダカで飛びこむようなものだつたろう。
それでも彼女は、動揺をおくびにも出さなかつた。
ボスとの信頼関係があるから。
小沢先生は、いつも優しく厳しいかた。
私は、政界に入る前からの支持者です。
改革ができる方は小沢一郎先生しかいないと信じてついてきました。
美人に惚れこまれて、うらやましいかぎり。
鬼瓦みたいな顔のくせに。
青木愛の奮闘は、一年戦争後期に投入された、
地球連邦軍パイロットのアムロ・レイ少尉(終戦時)と、
その乗機、RX-78-2「ガンダム」を思い起こさせる。
ガンダムがなくても、地球連邦はジオン公国に勝てたろうが、
ガンダムなしの一年戦争など、かんがえられない。
なんでもガンダムにたとえるのも安直かな。
それはともかく。
(ほどほどに)若くて、うつくしくて、人間的な。
そんな将来有望たる政治家の誕生を、こころから祝福したい。
以下の記事とあわせて、「民主党三部作」の完成です。
そしてわが国のまつりごとは、あらたな章にはいります。
「小沢一郎、ホンモノの言葉」(五月十二日に投稿)
「国を割つて ― 鳩山由紀夫と、その身辺」(七月二十三日に投稿)
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