田澤裕『君のお母さんを僕に下さい!』

 

 

君のお母さんを僕に下さい!

 

作者:田澤裕

掲載メディア:『ヤングガンガン』『マンガUP!』(スクウェア・エニックス)2018年-

単行本:ガンガンコミックスUP!

[ためし読みはこちら

 

 

 

リサイクルショップで働くフリーターの主人公には、好きな人がいる。

それは同僚の「夕月さん」。

保育園に通う息子がいるシングルマザーだが、

そうは見えないくらい可愛く、スタイルもいい。

 

 

 

 

恋愛経験のない主人公は、自分に向けられる優しさを好意だと勘違いし、

すっかり夕月さんに夢中になってしまう。

トラブルを心配した同僚の女は、それとなく自覚を促すが、

天然な夕月さんは、自分が惚れられてるとまったく気づいてなかった。

 

 

 

 

舞い上がった主人公「稜」は、仕事帰りに告白する。

スーツを着て指輪を贈り、いきなりプロポーズした。

夕月さんは驚くと同時に、ある一言に引っかかった。

「子供がいても僕には関係ありません」。

 

さすがに天然な夕月さんも、相手がどれほど世間知らずなのか悟った。

子供は関係ないって、なんなの。

私には子供より大切なものはないのに。

なのでわざと残酷に稜を突き放した。

 

 

 

 

主人公がみごとに撃沈した第1話は、ラブコメの導入として卓越している。

稜はいったん恋をあきらめ、バイトと会計士試験の勉強に専念する。

夕月さんとは微妙な関係になってしまったが、

自宅で夕食を御馳走になるくらいの距離感は保っている。

 

そこで見た「母親としての顔」は、稜にとって新鮮だった。

 

 

 

 

ニンジンの嫌いな息子は食べているものを吐き出すが、

夕月さんは自分のシャツでそれを受け止める。

あとで床を拭くより合理的だからだが、愛情がないとできない行動だ。

 

でも夕月さんはつい油断し、下着姿を稜に見せてしまう。

 

 

 

 

稜の日常もすこしづつ変化してゆく。

就職に失敗したせいで父親とケンカし、家を出たのだが、

久しぶりに帰った実家で、会いたくなかった父と出くわす。

邪険に叱られると思いきや、その反応は意外なものだった。

 

いろいろあるけれど、なんだかんだでお互いを支え合う、

家族のありがたさを感じるエピソードが、作品全体で語られる。

 

 

 

 

夕月さんも母性だけの人ではない。

子供のためなら頑張れる、なんでもできる、それは事実だが、

できることには限界があるし、不安になるときもある。

「母は強し」なんて安易に言われると納得できない。

 

そんなシングルマザーの孤独感や無力感も描かれる。

作者の初単行本と思われるが、中堅作家レベルの充実した作品だ。





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苑田 謙

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