マウンテンプクイチ『球詠』5巻

 

 

球詠

 

作者:マウンテンプクイチ

掲載誌:『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)2016年-

単行本:まんがタイムKRコミックス

ためし読み/当ブログの関連記事

 

 

 

モノローグの形で珠姫が野球観をかたる第25話は、非常に重要な回。

かつてバッテリーをくんだ和美が堅実なチーム戦術にとりこまれ、

打たせて取るオトナな投手に変貌したことを残念がる。

そして、現在のパートナーであるヨミへの愛着を再確認する。

 

あまり感情をあらわにしないシャイな性格の珠姫だが、

いやだからこそか、気迫で敵をねじふせるタイプを好むのだった。

 

 

 

 

良くも悪くも、アマチュアリズムが新越谷のフィロソフィだ。

データにもとづく戦術を採用するのは当然として、

いざというときは感情を爆発させ、おのれの力を最大限にひきだす。

 

団体競技ゆえキャラクター数が多すぎるのが欠点かもしれないが、

しかしだれがなんと言おうと、『球詠』はタマとヨミの物語だ。

 

 

 

 

大ピンチの場面でヨミは、未完成の秘密兵器を初披露した。

その名は「強直球」。

実態はなんの変哲もない単なるストレート。

新魔球がストレートって、ほかの野球漫画にあるだろうか?

 

女子が男子水準のプレーをしているというウソ以外、

技術的に戦術的にリアリズムを徹底するのが本作の特徴。

その制約のなかで、作者は知恵をしぼって話をもりあげる。

 

 

 

 

梁幽館戦でもっとも苦悩するのが、名参謀である芳乃。

こちらは部員9名、そのうち7名が1年生、しかも2名が初心者だ。

対する梁幽館は全国レベルの強豪。

采配はこの試合でも冴えてるが、地力の差でどうしても劣勢に。

そのたび自分の采配ミスだと気に病み、押し潰されそうになる。

藤井先生にまで客席から罵詈雑言が飛ぶから、つらい。

 

この重圧に耐えつづけるのが、芳乃のミッションなのだろう。

新越谷は彼女の頭脳がつくりあげたチームだ。

もし逃げ出したら、空中分解してしまう。

 

 

 

 

地力で劣るなら、地力を嵩上げすればいい。

新越谷ナインは試合のなかで成長してゆく。

このタッチアップは、息吹がはじめて見せた自主的判断。

芳乃と一緒にたくさん観戦してるから、戦術眼がないわけない。

 

それにしても走攻守、さらにはピッチングまでソツなくこなす、

マルチロールの息吹はすでになくてはならない存在だ。

 

 

 

 

白菊は、冷静に相手の守備位置をみてセーフティバント。

巨大な扇風機みたくブンブン振り回す印象のスラッガーだが、

もとは剣道日本一、むしろ駆け引きは得意中の得意。

 

 

 

 

新越谷が誇る天才バッター、中村希。

彼女はこの試合でくるしむ。

きびしく自問自答し、幼少期に植えこまれた深層心理までさかのぼり、

絶対の自信をもつ己の打撃哲学を捨てる決心をする。

 

そしてそれは、第10話で仕込んだ伏線の回収でもある。

なんてすごい漫画なんだ、『球詠』は!





関連記事

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: きらら系コミック 
最近の記事
記事の分類
検索とタグ

著者

苑田 謙

苑田 謙
漫画の記事が多め。
たまにオリジナル小説。

Twitter
メール送信

名前
アドレス
件名
本文

カレンダー
06 | 2019/07 | 08
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
月別アーカイヴ
07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03