三ノ咲コノリ『春夏冬さんに呪われるっ!?』
春夏冬さんに呪われるっ!?
作者:三ノ咲コノリ
配信アプリ:『Palcy』(講談社)2018年-
単行本:シリウスKC
学園に、うつくしい髪の転校生がやってきた。
その名は「春夏冬(あきなし)いろは」。
ミステリアスな雰囲気を発散しており、まるで魔女みたいだが、
中身はいたって温厚な性格の優等生である。
こちらはオカルト部の「萩好 環」。
モテそうなルックスなのに中二病をこじらせ、リア充をはげしく憎む。
ちなみに、撫でているカラスは剥製である。
そして放課後の教室で、春夏冬さんと環が出会う。
春夏冬さんの目つきが悪くて怖いのは、単に人見知りが原因だが、
環はそれを見て、自分が魔法で召喚した魔女と思いこんでしまう。
春夏冬さんの方にも問題はあり、ブードゥー人形をかわいいと思うなど、
いささかズレてる言動が、周囲からの誤解をまねく原因となっている。
こんな風にオカルトをネタにしつつも、怪異現象は特におきない学園コメディだ。
本作では春夏冬さんの暴走を「ワルプルってる」と称する。
さて、ストーリーはどちらかと言えば環の視点ですすむが、
彼女は最初からオカルトにどっぷりなので、読者を置いてきぼりな傾向がある。
感情移入すべき主人公がだれか、いまいちはっきりしない。
しかし、環の片思いが空回りする様子などはかわいい。
これをメインプロットに絡めたらもっとよかったろう。
たとえば、好きな男子が一か月後に転校することになっていて、
それまでに告白したいのに、三角関係に足を引っぱられるとか。
批判めいたことを述べたのは、この作家を応援してるから。
ちょっとわかりづらくても、手に取る価値があると言いたい。
『アルクアイネ』は北欧を舞台とするファンタジーだったが、
本作は卓抜なセンスを、いわゆる日常系に落とし込んでいる。
作者なりに工夫してるのがわかる。
とにかく、とびぬけて可憐で繊細なこの絵柄は、えがたいものだ。
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