小川麻衣子『魚の見る夢』
魚の見る夢
作者:小川麻衣子
発行:芳文社 2012-14年
レーベル:まんがタイムKRコミックス tsubomi series
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二歳ちがいの姉妹百合をテーマとする漫画。
黒髪ショートが姉の「巴」で、あかるい色の方が妹の「御影」。
別の高校へかよってるため制服がことなる。
スカートのトーンなどのバランスがハーモニアスだ。
登場人物の外見はともかく、内面はみなバランスを缺く。
姉にちかづく女に対し、御影が嫉妬と敵意と狂気をほとばしらせたり。
御影は画家である父から、かつて性的虐待をうけたと語り手は匂わせる。
いま姉妹は父と別居しているが、御影は姉に内緒で会っている。
父は人間として嫌いだが、絵は好きで、ヌードモデルをつとめることも。
中心人物は7人で、百合漫画としてはやや多いかも。
徐々に関係がふかまり、複雑化し、変容するなかで、
少女たちは残酷にふるまい、他者と自己を傷つける。
ナイフよりずっと鋭利に胸をえぐる。
この絆が永遠じゃないなら、みづからの手で壊すべきだから。
「魚の見る夢」とゆう詩的なタイトルの意味は明瞭でないが、
水族館の水槽を回遊する魚みたいで、決して居心地わるくない日常において、
みじかいモラトリアムの期限日を漠然と不安におもう少女の心情をさすらしい。
1巻の描き下ろしは、無邪気なころの姉妹をえがく。
昼寝する姉をみて、御影は毛づくろいする猫の様に口づけする。
セクシャルであるよりソーシャルなものとして百合を定義。
御影を慕う同級生の「高柳」が、学校の裏庭で急接近してくるシーン。
拒否するでもなく、御影は親友の瞳をじっとのぞきこむ。
見つめ合ってるのに、その視線があまりにつよすぎ、高柳は一線をこえられない。
永遠と背中あわせの一瞬を、少女らが睦みあう様子に閉じこめた、名作中の名場面だ。
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