尾崎かおり『ラブレター』

 

 

ラブレター

 

作者:尾崎かおり

掲載誌:『月刊アフタヌーン』(講談社)2016年9月号

[同著者の過去記事はこちら

 

 

 

53ページの読み切りである。

主人公は霊的存在で、いまは天上にいる。

なんか精子みたいなやつだ。

地上に遣わされる際の媒介物、つまり母親に、

ルックスのいい17歳の家出娘「魚沼麻子」をえらぶ。

 

 

 

 

子供の父親はクズで、麻子はすぐシングルマザーになる。

生活はたのしいが、きびしい。

風俗店で働いて糊口をしのぐしかない。

 

それなりに幸せな出産から、どん底への転落を4ページで描き切る。

メタファーとしてのジェンガ。

尾崎かおりの筆力は現役漫画家で最高峰と評したとして、

異を唱える人間はすくないだろう。

 

 

 

 

麻子は息子を愛している。

しかし彼が存在するせいで、ふたりが不幸なのは事実だった。

麻子は育児を放棄し、息子は孤独に死ぬ。

 

また4ページで、尾崎は子殺しにいたる母の心理をなぞる。

漫画史上に類似作があるか僕は知らない。

おそらくない。

 

 

 

 

懲役刑をへて、麻子は出所する。

実家にもどり、本名を隠してスーパーで働く。

二度と子供はつくらないと決めている。

麻子に無慙に殺されたが、彼女の最大の理解者でもある、

息子の魂との和解が達者な画力で描かれる。

 

ネグレクトは名作『神様がうそをつく。』のテーマだが、

本短篇ではそれを親の側から表現し、世界像を完成させる。

だれより不器用だが、当人なりにまっすぐな女子の生き様。

「かわいいは正義」だとしたら、本作がその根拠にふさわしい。






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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

タグ: 尾崎かおり 
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