樋口陽一/小林節『「憲法改正」の真実』
『甲鉄城のカバネリ』(テレビアニメ/2016年)
「憲法改正」の真実
著者:樋口陽一 小林節
発行:集英社 2016年
レーベル:集英社新書
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2009年の衆議院選挙で、自由民主党は弱体化した。
勉強熱心な叩き上げの議員が落選し、世襲議員ばかりが残った。
舛添要一などは見切りをつけて離党した。
自民党の法務族は世襲議員が多い。
憲法なんて利権が絡まないから、強い地盤をもつ連中の趣味でやっている。
三世四世議員は、旧体制の支配層の子孫だ。
たとえば安倍晋三の祖父・岸信介は、ファシズム期の文官の最高責任者。
ゆえに彼らはファシズム期の10年を憧憬し、戦後を否定する。
私怨にもとづいてるから本気だ。
日本国憲法への憎悪が、彼らのアイデンティティなのだ。
学校教育では明治憲法を批判し、日本国憲法を賞讃する。
しかしその評価はバランスを缺いていると、樋口陽一はのべる。
明治憲法は、19世紀後半の基準でみれば立派だった。
「ビリケンさん」にまつわるトリビア(p37)、「神聖」とゆう文言の意味(p59)、
民衆の憲法運動(p75)、伊藤博文の議論(p83)などの例を挙げ、
上から下まで一丸となり近代国家建設にとりくんだ努力を、本書はおしえる。
つまりファシズム期の10年が異常なだけ。
憲法テロリストは法と道徳を区別できないので、
改憲草案で「家族を尊重せよ」などと謳い上げる。
これでは一人暮らしや離婚の自由がなくなる。
すくなくとも憲法で保證されなくなる。
なにしろ草案では「個人」の概念が消滅してるのだ!
「伝統」や「和」といったタワゴトは、明治憲法に出てこない。
似たものを探すなら、ナチスに従属したフランスのヴィシー政権だ。
大日本帝国は滅亡したが、上の方はほとんど入れ替わってない。
安倍晋三がその證明である。
学校教育で立憲主義を教えないのも、ファシズム期の名残りだ。
ではなぜ、財界などから憲法テロへの批判がおきないのか。
小林:新自由主義によって人々が分断され、
安定した社会基盤が壊されていくなかで、
スローガンとしては愛国だの、家族だの、
美しい国土だのを謳いあげて、社会の綻びを隠そうということですね。
憲法テロリストは無知だが、無知を装ってる側面もある。
全身全霊で叩き潰さねば日本は終わりだ。
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