157cmの暴君 ― 『ハルフウェイ』

 

ハルフウェイ

 

出演:北乃きい 岡田将生 成宮寛貴

監督:北川悦吏子

制作:日本 平成二十一年

[京成ローザ10で鑑賞]

 

 

 

かの女は、うなりをあげるチェーンソー。

当人はまじめに仕事をしているだけだが、

まさに全身が凶器で、ちかよる気をおこさせない。

本作は、ホルモン分泌が異常をきたす高校三年生の、

みぐるしい恋模様をえがく青春映画。

でもこのふたり、キスすらしない。

自然の摂理に反するふるまいなのだが、その原因はわかる。

だって北乃きい、こわいんだもん。

とにかく、拍子がおかしい。

オセロの石の倍の面積をもつ黒目が、予想不能なタイミングでうごく。

眼窩を、エアホッケーの円盤みたいに、はげしく上下左右。

ふざけて寄り目をみせる場面があるが、

視神経がちぎれないか心配になるほど寄っていた!

ホラー映画かよ。

発声の間、高低、大小も、つねに予測をうらぎり、観客をいらだたせる。

顔がかわいいから、ゆるされているだけ。

多分、天才なんだろう。

 

 

 

北川監督は、わかい役者が即興でしゃべるところを、手もちカメラでおさめ、

「ドキュメンタリー風」にみせる手法をとったらしい。

おもうに、「ブレブレの画面=リアル」という発想自体が、

すでに陳腐化した常套手段であって、「現実味」の追求からほどとおい。

即興演技をしいるのも、経験不足の演技者にとっては、

必要以上の心理的な負荷がかかり、逆効果ではないだろうか。

というわけで本作は、北乃きいの脱線暴走をとらえる「記録映画」となった。

サファリパークで、車中から飢えたライオンをながめる気分。

息をのむような、うつくしい場面もたくさんあるけれど。

川べりの柱石の上にたつ、ふてぶてしく安定した姿勢。

友人とおおきなシャボン玉をつくってあそぶときの、機敏な身のこなし。

そしてもちろん、結末での大粒の涙。

「ハルフウェイ」という題名は、撮影中にかの女が、

単語帳にある"halfway"をよみちがえた発音が、そのままつかわれた。

小樽でのきいは、まるで独裁者だ。

 

 

 

この映画をみて気づいたのだが、オレは、

宮あおいがゲーノー界に移住したころから、邦画をみなくなった気がする。

この世に、テレビほど憎いものはない。

資金力にものをいわせ、有望な役者を片端から徴用するくせに、

つくる作品はゴミばかり。

失意の観客の足が、外国映画にむくのも当然だ。

そして、このくにの映画の、空席のままの玉座の最短距離にいるのが、

北乃きいかもしれない。

だからかの女には、日本放送協会などに魂をうることなく、

その活発なひとみで、自分の王国をきずくことをのぞむ。

しばらくは、邦画にすこしばかり時間と金をわりふろうかな。

この横須賀うまれの暴れ馬には、先行投資にあたいする可能性があるから。

 


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