瀬口たかひろ/ラリー遠田『イロモンガール』
イロモンガール
作画:瀬口たかひろ
原作:ラリー遠田
掲載誌:『ヤングアニマル』(白泉社)2015年-
単行本:ジェッツコミックス
売れない女ピン芸人「碧海玲奈」を主人公とする物語。
このジャンルは「そもそもネタを漫画にして面白いのか」とゆう難問があるが、
玲奈は度胸だけで才能ゼロなので安心して読める。
収入の9割を居酒屋のバイトで稼ぐ。
さわやかなルックスで、まともな道をすすめば幸せになれたろうと思わせる。
能年玲奈っぽいベタな造形だが、ベタでこそ瀬口たかひろだろう。
女芸人同士の絆は、百合的でもある。
あいかわらず女の子の描き分けがうまい。
居酒屋でのお笑い談義。
天丼だ考えオチだ平場だと専門用語がとびだし、玲奈はついてゆけない。
人を笑わせる方程式など存在しない。
足りない頭でかんがえるほど、ドツボにはまる。
だって利口ぶったやつって、おもしろくないもの。
才能のなさを自覚した玲奈は、芸人としてのアイデンティティを見失う。
ライブのアンケートでまた最下位になれば、事務所をクビになると決まった。
追いこまれた玲奈は舞台上でネタを忘れてしまい、ブチ切れて客をいじりだす。
ところがこれがネタの一部と勘違いされ、はじめての爆笑を誘った。
瀬口たかひろとお笑いは、相性がよい。
優に20年を超えるキャリアは娯楽一筋、その多くが原作つきであり、
「アーティスト」を気取ることなく最前線に立ち続けてきた。
おそらく、自分がもっとも厳しいところで戦ってきたとゆう矜持があるはずで、
冷淡な観客と正面からむきあう玲奈への共感がこもっている。
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