佐藤ミト『流れ星に願うほど僕らは素直じゃない』
流れ星に願うほど僕らは素直じゃない
作者:佐藤ミト
掲載誌:『コミックヘヴン』(日本文芸社)2015年-
単行本:ニチブンコミックス
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川のせせらぎが聞こえる、山辺の町。
高校生の男女6名は、みな幼なじみだ。
長い髪の少女「すばる」は、小学5年のとき「北斗」に告白した。
返事はまだ聞いてない。
なぜかと言うと、その日に川へ転落し、5年間眠りつづけているから。
大事なものを過去に置き忘れたまま、少年少女は生きる。
すばるを救えなかったせいでずっと苦しむ北斗のもとへ、
霊的存在となったすばるが、肉体を病院にのこして突然あらわれる。
オフィーリア的幻想にみちた青春ものだ。
あかるく仲間思いで、つねに北斗の支えとなる「茜」が印象的。
心に傷を負った若者が、おのれの恋愛感情にとまどい、
ときに反撥しあいながら成長する姿を、丹念にえがく。
おなじくヘヴン連載の、佐々木ミノル『中卒労働者から始める高校生活』に似た味わい。
しかし茜はかならずしも無垢じゃない。
あの日、すばるに嫉妬し、告白を邪魔しようとした。
幼いころ起きた悲しい事件をめぐり、
ストーリーが時間を行き来しつつ転がるサスペンス要素は、
三部けい『僕だけがいない街』を髣髴させる。
細心の風景描写、ファンタジックな浮遊感、炸裂する純情。
複雑な読後感をのこす注目作だ。
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