渡邉ポポ『ふらら一人でできませんっ』
ふらら一人でできませんっ
作者:渡邉ポポ
掲載誌:『コミックハイ!』『月刊アクション』『漫画アクション』(双葉社)2015年-
単行本:アクションコミックス
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なんでもひとりで出来る女は、可愛気がない。
ちょっと甘えん坊な方が魅力的。
他力本願を、知的障碍を疑われるレベルまで推し進めたのが、
本作のヒロイン「甘宮ふらら」である。
幼なじみ「琴平錦」との待ち合わせに母親同伴。
高校入学初日から手を焼かせる。
毎話ふららちゃんはミッションに挑む。
記念すべき第1話は「コンビニのトイレを借りる」。
僕も抵抗を感じるので絶対つかわない。
独り立ちを促したい錦は傍観する。
店員の前で硬直したふららの腿を、一筋の水滴がつたう。
本人は汗と言い張るが。
コンビニの棚やスカートのプリーツなど、『よつばと!』なみに細密な描写が、
ちょっと極端な物語のリアリティを確保。
ふららちゃんは一言も発しない。
他者の話は理解できるし、LINEなどのテキスト交換はできるけど。
かわりに本作は表情が雄辯に語る。
仮病をつかった娘をみる母の虚無感は、ハトポポコの諸作に匹敵。
行動力ゼロのヒロインに読者が共感できるのは、彼女が感受性豊かだから。
砂時計の様に液体が落ちる「ドロップモーション」のうつくしさに夢中になったり。
ふららは水滴に縁があるらしい。
それは錦が自分の用事をすますための策略だったけど。
「ヒロインの視点で世界を再起動させる」のは『よつばと!』のテーマだが、
意外なギミックでたのしませる本作は、そのアップグレード版。
ひとりじゃなんにも出来ないくせに、一丁前に桜を愛でるふらら。
イラッとくるけど、同胞意識も感じる。
四季の美を解する心、それが大和撫子の条件だから。
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