『世界観のつくり方 イラストレーション作家の創造力』
世界観のつくり方 イラストレーション作家の創造力
編著:株式会社Playce
発行:エムディエヌコーポレーション 2014年
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ファンタジー・ミリタリー・アイドル・大正レトロ・学園生活・オカルト・日常生活。
6人のイラストレーターに6種のジャンルを描かせ、
その世界観がどう構築されているか解説する技法書。
しばふ氏の「ミリタリー」が圧巻。
アフガニスタンで治安維持活動をおこなうイギリス軍兵士ふたり。
左の武器はなんて言うんだろう、かっこいい。
マイナー兵器でミリオタをよろこばす。
モノだけでは「イラスト」として完成しない。
塗りの段階で右の少女を、笑顔から緊張した表情へかえた。
「憧れ」とゆう関係性がうまれる。
女の子の肌は白やピンクに近づけたくなる。
ここは誘惑に抗い、明度を落とす。
天幕の下だから影がかからないとおかしい。
かわいさより、リアリティ。
光は、光るべき物にあたえよ。
ペットボトルのラベルは彩度の高い青と赤で、殺伐とした職場の癒やしに。
この水はナルゲンボトルへ補給。
黒光りするL85A2。
入念に整備をおこなう、持ち主の几帳面さがあらわれる。
絵師もパーツごとの塗り分けの労を惜しまない。
この引用画像では伝わらないが、仕上げ時に空の色を調整、
逆光による「白飛び」にして報道写真っぽく演出する。
肉眼から離れた誇張表現が、見る者を戦場へいざなう。
ぶーた氏による「学園生活」。
放課後の一瞬を切り取る。
カーテンのシワや陰は、描線でなく色でつけ、窓枠が透けて見える様に塗る。
空気の揺れがあざやかに浮かぶ。
物理が、少女の心理とシンクロナイズ。
艶っぽい場面だが、差し色の数をしぼり、中央にあつめ上品な印象に。
赤と緑の補色を交互に配置、ミニマムな表現で最大限のひろがりを獲得する。
新井陽次郎の「日常生活」。
下校途中に小学生男子がみた、ハッとする光景。
金網の向こうの少女の髪とスカートが、風になびく。
ジブリ出身のアニメーターであるせいか、いまにも空を飛びそう。
緑色のおおい構図だが、少女のランドセル・カラーコーン・少年のズボンが赤。
補色を点在させ、「緑っぽい絵」と思われるのを回避しつつ、
四隅に画鋲を刺す様に、幻想を現実世界へつなぎとめる。
『ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ~アニメ・スタンダード・ライヴ・アット・ビルボードライブ東京~』ジャケット
僕は、人間が生きている世界には必ず争いが存在すると考えているんです。
悲しいいさかいやぐれつな殺し合いは、決してなくなることはない。
描いた世界の向こう側に、そういうものもあるのだろうと
感じさせる絵が描けたら良いなと思うんですよね。
アニメーター・吉田健一へのインタビュー
女の子の笑顔や服装以外にも、世界の構成要素は存在する。
光と闇、補色と同系色、心理と物理、希望と絶望……。
セリフより雄辯に、アニメーションよりダイナミックに、タブレットから音楽を奏でる。
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