雨と棘『少女熱』

『授業参観』

 

 

少女熱

 

作者:雨と棘

発行:茜新社 2015年

レーベル:TENMA COMICS LO

[ためし読みはこちら

 

 

 

ロリ漫画界に一時代を築いた作者の、7年ぶりの単行本。

長いスランプに陥ったあげく、原作者を募集してコンビ結成、

ペンネームは「雨がっぱ少女群」から「雨と棘」へかわった。

 

 

 

 

授業参観で父娘は、ほかの生徒・父兄・教師を縛り上げ、

自分たちの「愛の形」を実演してみせる。

ママ連中は拘束するまえに一応、嫌かどうか聞いてるし、

娘も合意のうえだから、これは「強制」じゃないとゆうリクツ。

 

 

 

 

校内放送で家族愛を謳いあげる。

ことほど左様に、ロリ漫画はリクツっぽい。

 

いかなジャンルでも、物語で人物は葛藤し、自発的に行動する。

少女らは決して「ちいさなダッチワイフ」ではない。

 

登場人物が、何か特定の事件に反応するその様子によって、

その人物を劇的に表現することができるのである。

ドラマの本質は、つまることろ、人種や、肌の色、文化的素養の違いを超えて、

人間同士のかかわり合いを表現することである。

 

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(フィルムアート社)

 

ドラマがドラマである以上、人権思想と折り合いをつける必要がある。

ロリ漫画家が多辯なのは当然。

 

 

 

 

僕のお気にいりの一篇、『放課後少女』。

事後に13歳の「君嶋」が口にした爆弾発言による、逆転現象が痛快。

 

18世紀の偉大なドイツ人哲学者ヘーゲルは、

悲劇の根本は片方が正しくて、もう片方が正しくないということや、

善悪の対立から生まれるのではなく、

どちらも正しいということから生まれるのだということを述べている。

つまり、弁証法的に言えば、「正しいもの」同士の対立が悲劇なのである。

 

前掲書

 

 

 

 

『夢を廻る円環』は、「雨がっぱ少女群」名義のSF作品。

廃墟と化した東京で、失業したての青年が山手線に乗る。

一時間に一本だけ運行している。

 

作者の心象風景だろう。

 

 

 

 

まるでメリーゴーラウンドや観覧車みたいでたのしくて、

少女は一日中山手線に乗り続ける。

ときに客を取り、食い扶持を稼ぐ。

 

倒産した会社で手掛けていた遊園地の計画図を青年が見せると、

少女はまぶしい笑顔でよろこぶ。

「絵は私を裏切らない」と言って。

 

 

 

 

精神の廃墟で、自滅へむかうスパイラルを下降する僕らの慾望と正義を、

少女は反定立の形でうけとめ、矛盾の力学として展開。

澄まし顔で肯定し、笑顔で否定する、永久的な革命運動。




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苑田 健

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