珈琲『のぼる小寺さん』
のぼる小寺さん
作者:珈琲
掲載誌:『good!アフタヌーン』(講談社)2015年-
単行本:アフタヌーンKC
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「ボルダリング」は、シューズと滑り止めのチョークだけでおこなう、
どちらかとゆうとカジュアルなフリークライミングの一種。
細身の女子が壁にはりつく姿は絵になる。
体重による負荷がかるい分、男より有利な面も。
いわば本作は「雰囲気マンガ」と「スポ根」のフュージョン。
挫折とか、強力なライバルとか、めざせ全国とか、明確なストーリーラインがない。
周囲の人間の視点から、小寺さんの手足や脇や腹筋をながめるだけ。
クライマーは「見られる」存在だ。
必死によじ登るところを、安全な地面からジロジロと。
小寺さんは制服姿もカンペキ。
つねに身だしなみに余念がない。
窓ガラスで前髪をなおす様子も、見られてるけど。
休み時間に制服でボルダリング。
筋力でみづからの全体重をささえるとき、だれだって無防備になる。
ありえない角度からみる、セーラー服とスパッツのコーディネイションが詩的だ。
隙だらけなのに、隙がない。
部活後、空きっ腹をラーメン二郎でみたす。
食が細いのもクライマー向き。
重力にさからい、ひたすら高みをめざす。
崇高で、力づよく、あぶなっかしい。
これほど天使にちかいJKを、僕はほかに知らない。
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