merryhachi『立花館 To Lie あんぐる』
立花館 To Lie あんぐる
作者:merryhachi
掲載誌:『コミック百合姫』(一迅社)2014年-
単行本:百合姫コミックス
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賛否両論、コップの中で激しい嵐をよんでいる問題作。
ガチ百合とかいらないから売れる漫画描け!
売れる漫画がわからない?
だったらよその売れてる漫画のコピーでいいよ(笑
・・・という現在の百合姫編集部の方針を忠実に反映した作品。
対立点をまとめると、女の子同士のズブズブの恋愛をえがく『コミック百合姫』で、
『To LOVEる -とらぶる-』みたいなハーレムラブコメを許容すべきか否か。
タイトルを似せての挑発に、ピューリタンが反撥するのは無理ない。
『ゆるゆり』や『百合男子』さえふくむ、広大な百合姫ワールドが動揺している。
主人公がつぎつぎとラッキースケベに巻きこまれるたび、
ツンデレ幼なじみはいちいち嫉妬の炎をもやす。
たしかにコミック百合姫より、週刊少年ジャンプがふさわしいと言えなくもない。
主人公の「夏乃はなび」は高校進学を期に、女子寮生活をはじめた。
住まいは見るからにオンボロな「立花館」。
一歳下の幼なじみ「藤原このみ」が寮を切り盛りしている。
はなびを意識してるらしく、ツンツンとつれない態度。
それでも6年ぶりの再会で、思い出話に花が咲く。
かよいあう意識の流れのうつくしさは、少年漫画ではあじわえない。
そこへ唐突に挿入される、妙に入念な描き込みのパンチラ。
他にもおさわり・おっぱい・ノーパン・おもらしと盛りだくさん。
オタク特有の選民意識にとらわれ、百合が高尚なものと錯覚する百合オタに、
ヘテロだろうとホモだろうとセックスはセックスだと言わんばかりの粗雑さで、
わかりやすい記号的エロティシズムをつきつける。
ファストフードやファストファッションにつづく、「ファスト百合」時代の到来か。
僕はこの論争に意見はない。
娯楽の世界は「売れたものが正義」で、読者が泣こうが喚こうが、
そよ風ほどの影響力もおよばさないと思っているから。
では視点をかえ、ジャンル論的にかんがえよう。
『立花館』は百合漫画なのか?
まづ定義から始めねばなるまい。
脚本家・吉田玲子の発言を引用する。
空気感みたいなものは意識しています。
その場のなごやかさ、張りつめ方、人と人の距離感、声には出さない思いやり。
そうしたものを含んだ会話になるといいなと。
「百合」とは、思春期の、もしくはそれに準ずる年代の女同士の、
やさしさと緊張感をはらむ意思疎通、およびその空気感をえがくもの。
結論。
『立花館 To Lie あんぐる』は百合漫画だ。
本来あらゆる作品がそうあるべきなのと同様に。
コミック百合姫のユニクロ化は、百合デモクラシー時代の必然かもしれない。
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