高橋哲哉『ドキドキしすたー♡葵ちゃん』
ドキドキしすたー♡葵ちゃん
作者:高橋哲哉
掲載誌:『電撃萌王』(アスキー・メディアワークス/KADOKAWA)2014年-
単行本:電撃コミックスNEXT
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お兄ちゃんだいすきな中学1年の「小日向葵」を愛でる妹モノ。
嫁の様に、妻の様に、かいがいしく尽くす。
右下のコマの満面の笑みに癒される。
パパとママはいつもお仕事で家にあまりいないそうで、
邪魔するものない日常のなか、兄妹はますます親密に。
風邪をひいた兄を看病するシーンでは、
腕にかかるツインテのつややかな一房に見惚れる。
本作は髪の描写がなまめかしい。
絵心ない僕が指摘するのもなんだが、デッサンが不安定とゆうか、
体型のバランスがよろしくない構図が散見される。
でもプリプリのお尻は、暴力的なまでの可愛さ。
たとえば水瀬るるう『大家さんは思春期!』もそうだが、
中学1年女子だけが発する可憐さってのがある。
まだあどけない一方で、十分うけいれ可能にもみえる。
本作に中二病的な小難しさは皆無。
がんばるぞいとか紐とか、ツイッターで拡散されそうなフックもない。
音楽でゆうならシンプルなパンクロック。
水着回のたのしさも尋常ではない。
葵をおそう「ハプニング」はお約束で、そこがいい。
ある種の伝統藝能とみなしうる。
作者は、ゼロ年代に「高橋てつや」名義で、
『ペンギン娘』や同人サークル「モエモエカフェ」などで一世を風靡した、
いわゆる「萌え文化」のオリジネイターのひとり。
お風呂回の、兄の方がセックスを意識してないことによる諧謔は、
ラモーンズに匹敵する様式美。
敏感な葵は、お兄ちゃんに耳かきしてもらい絶頂に達する。
ちなみに実際は着衣。
思想がなく、リアリティがなく、現代性や社会性もない。
特に自己言及がおそろしいほどない。
ないないづくしだが、それでもひたすら可愛い妹を愛でたいとゆう、
歯止めのきかない熱情が網膜ごと読者を貫通する、まさに電撃的な会心作だ。
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