上月さつき『制服嗜好』
制服嗜好
著者:上月さつき
発行:イースト・プレス 2014年
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昨年9月に刊行されて以来、すでに3刷をかさねるなど好評を博した、
女学生の制服について愛情こめて解説する図鑑。
著者は素材系メーカーに勤務してるそうで、ただ見てカワイイとゆうだけでなく、
「マテリアルとしての制服」が素人にも理解できるつくり。
たとえばプリーツスカートのポケットが左側におおい理由、しってました?
オシャレ指向のセーラー服は、胸元にダーツとゆう縫いが施されている。
女子らしい曲線的なシルエットを表現。
いくら純粋な学術的関心から発する行動だとしても、
道行く乙女をよびとめ制服を触らせてもらうわけにゆかないので、
本書のさわやかなイラストと丁寧な文章に、知的好奇心が満たされた。
冬のセーラー服は紺や黒や灰色。
パーツがシンプルなため、ブレザーとくらべると暗めな印象に。
僕も漠然とセーラーは夏服にかぎるとおもっていた。
しかしその分、冬セーラーは三角タイや襟のセーラーラインがきわだつ。
自分がいかに浅薄な理解しかもたなかったか、恥じいるばかり。
セーラーもブレザーも、それぞれすばらしい。
両者をイイトコどりした「セーラーブレザー」なる制服も存在。
襟はセーラー、裾はブレザー。
二重人格みたいでミステリアスだ。
女子がこれらを着こなすことで、布切れに生命をあたえる。
具体的にゆうと、どう「指定」と折り合うか。
指定外のミント色のリュックと制服がかなでる、夏らしい色彩のハーモニーとか。
たとえアレンジをゆるさない学校でも、彼女らのオシャレ心はとめられない。
マフラーのかわいい結び方とか。
冬のアウターの定番といえばPコートやダッフルコートだが、
トッパーコートは着崩しがむづかしく、おちついた雰囲気に。
やや薄手の素材によるボディラインと、
末広がりのAラインシルエットが、夏の少女を冬の淑女にかえる。
束縛のなかの自由。
無個性を転覆した個性。
制服がおりなす銀河系の広大さにめまいがしそう。
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