結布/綱本将也『ゆかりちゃん』
ゆかりちゃん
作画:結布
原作:綱本将也
発行:集英社 2015年
レーベル:ジャンプコミックス
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イラストレーターとして著名な「結布」の漫画作品。
セーラー服でスーパーをねりあるく、くせっ毛の少女が醸しだす空気感は秀逸だ。
笑顔なのは、自分とおなじ名の商品をみつけたから。
三島食品のふりかけ、「ゆかり」。
亡くなった母のかわりに、ゆかりが父のお弁当をつくる。
まだ失敗ばかり、白米にふりかけだけのことも。
台所にたつ娘の姿は、亡き妻を髣髴させる。
うしなわれた幸福をとりもどそうと努力する父娘をえがく。
小津安二郎や成瀬巳喜男の映画みたくシンプルな世界を、
「御飯にふりかけ」とゆう小道具で構成するのがおもしろい。
「ペペロンチーノにゆかり」とか、変わり種レシピも多数。
なにせ45年親しまれてきた定番、なんにでもマッチ。
舞台は浅草。
世話焼きなタバコ屋のおばちゃんなど、下町人情を隠し味に。
「商店街のあたたかいコミュニティ」なんて、正直とってつけた感は否めない。
下町だろうがとっくに消滅した文化だ。
いや、もともと存在したかすら怪しい。
ただ結布のやわらかい絵柄にあってるし、一種のファンタジーとしてたのしめる。
たとえば「セーラー服とぬか漬け」、なかなか美味でしょう。
懐かしさと目新しさをフュージョンした創作料理に舌鼓をうつ。
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