佐保里『宇野家の人びと』
宇野家の人びと
作者:佐保里
発行:エンターブレイン/KADOKAWA 2015年
レーベル:B's-LOG COMICS
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会社員の「宇野一希」が里帰り。
事情あってケータイをつかえないが、田舎ゆえ公衆電話がのこっていた。
育ての親である祖母の出迎えをうける……はずだった。
帰郷したのは療養のため。
駅で発作をおこし倒れるなど、病状は深刻。
それより問題は、「壱子おばあちゃん」が50歳くらい若返ってること。
新薬の試験に参加したらこうなった。
そんなSF仕立ての家族コメディだ。
ひさかたぶりの青春を満喫するおばあちゃんが愛くるしい。
PCやスマホをつかいこなし、スノボにも挑戦。
1巻完結の本書は、同人誌発表作を中心にまとめたもの(参考:作者のブログ)。
作者の初単行本だが、はなやかな着物の柄など画力は達者。
エンピツ風のかすれた描線もモティーフにあっている。
やさしくて落ち着いたおばあちゃんは、本来かわいいものだが、
みづみづしい外見までとりもどすと無敵の存在に。
一希がわづらうのは「ブルーライト」による発作。
液晶画面の光をあびると卒倒してしまう。
PCもつかえないから失業者になった。
あたらしい文明って、そんなにいいものじゃない。
見ためは若返った壱子おばあちゃんも、不老不死ではない。
中身は70歳、人生の終わりを意識する毎日。
彼女が輝いてみえるのは、かぎりある時間を精一杯生きてるから。
深みのある心理描写にもひかれる佳作だ。
![]() | 宇野家の人びと (B's-LOG COMICS) (2015/04/01) 佐保里 |
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