八十八良『不死の猟犬』2巻 黒いラブコメ
不死(しなず)の猟犬
作者:八十八良
掲載誌:『ハルタ』(エンターブレイン/KADOKAWA)2013年-
単行本:ビームコミックス
[1巻の記事はこちら]
チアガールコスで戦うツインテ少女「切子(きりこ)」の見せ場たっぷりな2巻。
エモノはPDWの「H&K MP7」。
姉貴分のセーラー服メガネ「風間リン」が、
ドラムマガジンつきAK-47二丁ふりまわすのにくらべると、やけに現実的。
軽量小型で市街地戦むきか。
定年まぢかの刑事「重松」は「H&K HK416」を狙撃銃として運用。
銃にも流行り廃りがあり、アクション漫画はそれを無視できない。
しっかり描きこまれた武器が、闇のなかで鈍く黒光りする。
PDWの小口径高速弾は、やすやす防弾ベストを貫通。
切子の粗暴さとも一致する。
新米の逃がし屋「香田」のトレーニング。
窮屈な構えで、運転席から左手で抜き撃ち。
職質から5秒で脱出するための戦術だ。
空間的な駆け引きの描写に、作者は重点おく。
わざと検問を敷かず、味方が待ち伏せる橋へおいこむ警察。
こまかいことだが、地図の折り目まで表現されている。
それに対し、想定外のパニック戦術で敵を翻弄するリン。
無意味に空薬莢をばらまく漫画じゃない。
本作は「スパイもの」の要素もある。
闘って生きのびるか、愛に殉じて死ぬかの二者択一。
得意の恋愛描写で、ヒロインのクーデレな魅力をひきだす。
銃器へのこだわりやダークな作画で誤解されてそうだが、
『不死の猟犬』は本質的にラブコメ漫画だ。
恋愛とゆう苛酷な闘争が、銃撃戦を相対化し、より絵になる世界へ変異させる。
新キャラの「白雪姫」は、ネトゲのクランの紅一点。
去年の流行語「オタサーの姫」をとりいれたらしい。
ちなみに一人称は「僕」。
ときに通俗的だったり、「RDS」など話がわかりづらかったり、
生煮え感を否定できない作品だが、まあ『ハルタ』は大抵そうだし、
繊細かつ高度に安定した絵柄は、缺点を美点にかえる。
スープがしみこんでなくても、うまい肉はうまい。
姫の足もとの影にゾクッときた人ならわかるはず。
![]() | 不死の猟犬 2巻 (ビームコミックス) (2015/02/14) 八十八良 |
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