トマ・ピケティ『21世紀の資本』 あらたな神話をもとめて

 

 

21世紀の資本

Le Capital au XXIe siècle

 

著者:トマ・ピケティ

訳者:山形浩生 守岡桜 森本正史

発行:みすず書房 2014年

原書発行:フランス 2013年

 

 

 

諸神話についての本だ。

それらは「国家」とゆう前時代的な背景をせおっている。

 

ピケティはもっと国内問題へ目をむけろと唆す。

「中国脅威論」なんて嘘っぱちだ、原因を外にもとめるバイアスがかかってると。

マルクスでさえ、国民経済計算についてのデータをみすごしてきたと。

 

著者は、大西洋を股にかける華麗なキャリアをもちながら、

フェーヴル・ブローデル・レヴィ=ストロースなど、フランス的知性の優位を説く。

社会科学者として「ナショナリスト」にみられてもかまわないとまで。

 

 

ジェーン・オースティン

 

 

本書はバルザックやオースティンの小説への言及が多い、いや多すぎる。

ボクはむかしオースティンがすきだったけど、アクビがでた。

 

マルクス『資本論』は、文学作品をプログラムの中核にすえる。

14世紀のダンテ『神曲』の「地獄めぐり」を象徴的に資本主義の分析にもちい、

18世紀のスターン『トリストラム・シャンディ』から脱力した文体をまなび、

同時代のディケンズと歩調あわせ「社会の敵」を糾弾した。

 

ピケティによると、ふたつの世界大戦をへて、文学から金銭がきえた。

安定した通貨参照点をインフレに覆い隠され、小説家はカネの話ができなくなる。

彼が19世紀小説に執着するのは、お金がリアルだったころへの学者としてのノスタルジアだ。

カール、あんたの生きた時代がうらやましいと。

 

 

 

 

著者は折れ線グラフとゆう現代アートで、国家とお金の関係を再定義。

フランス人が「栄光の30年」、経済成長が高かった1940年代末から70年代末に、

いかに郷愁をいだいているかなどがわかる。

 

 

1968年、南フランスのストライキ参加者(撮影:GeorgeLouis)

 

 

ボクは、1968年の五月革命は文化的社会的な運動とおもっていたが、

最大の成果は賃金上昇だったとか。

フランス経済についてまるで無知なので勉強になる。

 

 

 

 

かたや同時期の英米は「追いつかれた」とゆう脅威を感じていた。

サッチャーやレーガンの「保守派革命」が、福祉国家を白紙にもどした理由。

政策の変化は成長率にほとんど影響なかったが。

 

 

ボストン茶会事件

 

 

だからアメリカ人のノスタルジアは「ボストン茶会事件」へむかう。

現在より19世紀はじめの方が格差がちいさかったから。

かつてはヨーロッパより平等な国だった。

 

アングロサクソン諸国は累進課税のオーソリティでもある。

イギリスなんて40年代と70年代に最高税率が98%に達した。

ビートルズが『タックスマン』で不平こぼしたアレ。

 

 

 

 

1980年以降顕著な「スーパー経営者」の台頭も、アングロサクソン的現象。

世界的に格差がひろがってるとはいえ、ほかは英語圏ほど増大してない。

 

 

ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズ(撮影:Joi Ito)

 

 

80年代的な英雄たちは自分らの超高級について、

「才能」を根拠に正当化するが、それは単なる企業利益の変動、

つまり「ツキ」に対して支払われたと、著者はデータにもとづき立證。

 

もし才能がすべてなら、スティーヴ・ジョブズの財産がビル・ゲイツの1/6なのはおかしいし、

ゲイツの成功をもたらした数千人のエンジニアや科学者が特許取得しなかったのに、

OS独占から引き出しただけの利益が賞讃されるのも筋がとおらない。

 

勿論、社会にイノヴェイションは必要だ。

だからこそ、起業家が不労所得生活者になりがちで、

その富が子孫へ相続される事実に目をむけねばならない。

いくらなんでも21世紀に貴族階級は不要だろう。

 

 

 

 

政治体制は、富の分配に関係ない。

おそらく政治学者を震撼させたであろう、本書の有名なテーゼだ。

君主制だろうと共和制だろうと、資本は不平等にふるまう。

 

 

バスティーユ襲撃

 

 

平等主義をうたうフランス革命で格差がちぢまらなかったのは、

ひくすぎる税率のため、成長率が資本収益率に追いつかなかったから。

 

歴史を一刀両断する分析の切れ味は、「タックスマン」ピケティの面目躍如。

 

 

 

 

1人あたりの所得が年1%強しか成長しない今日、

某国の消費税みたく平均税率をあげるのは、まったく不合理。

選択肢は累進課税しかないが、経済学者ですら社会国家の存続より、

エリートの利益を優先する傾向をもつ。

 

 

つくみず『少女終末旅行』(バンチコミックス)

 

 

嘆いてもしかたない。

民主主義が資本主義のコントロールをとりもどすための制度を、

それが破滅するまえに何度も再発明せよ。

まづは、この国でなにがおきているか理解すること。




21世紀の資本21世紀の資本
(2014/12/09)
トマ・ピケティ

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