あけまして二〇〇八年 ― 第八十八回天皇杯決勝

ヤット

天皇杯 決勝 ガンバ大阪 対 柏レイソル

結果:1-0 (前後半[0-0 0-0] 延長戦[0-0 1-0])
得点者:播戸竜二 (延長後半11分)
会場:国立競技場
[テレビ観戦]



おきにいりのブログをのぞくたび恐縮するが、
当方は新年のご挨拶を略させていただく。
サッカー愛好者にとって、元日はあたらしい年のはじまりではない。
そして、第八十八回天皇杯決勝のフィールドでくりひろげられたのは、
はれがましさとは無縁の泥仕合。
スケジュールに無理につめこんだ国際試合のせいで、
ガンバ大阪の選手のからだから、ガタピシきしむ音がきこえる。
きき足をいためる遠藤保仁は、左でパスをさばいてごまかす。
ひっこめようにも、ほかに無事な人間がいない。
それでも優勝して、ACL出場権をえなくてはならない。
疲労と義務感という霧がこもる、おもくるしい百二十分。
となれば、人情味あふれる戦略家、
石崎信弘監督の花道を勝利でかざろう、
が合言葉の柏イレブンの男気に期待したくなるが、
サッカーはかならずしも身体的条件が予想どおりにはたらかない。
満身創痍、昏倒寸前のアジア王者が、
鉛の棒と化した両足をひきずりながら、徐々にフィールドを支配。



柏の指揮者は、後半二十一分までにすべての札をだしおえる。
結果論をいうなら、これが敗因。
勝負をいそぎすぎたことはいなめない。
延長戦にはいれば柏の選手のうごきもにぶり、
地力でまさるアジア王者に後手をふむだろう。
その判断は、合理的ではある。
ただ、相対する将が百五分間じっとたえ、
一枚も手札をうごかさないのはみこみちがいだったのでは。
百戦錬磨、西野朗。
不気味ですらある。
試合直後のインタビューでは、
「遠藤、橋本、明神らがケガをしているから、かえたくてもかえられなかった」
といっていたが、それでもよくねばるものだ。
西野の忍耐は戦況を好転させ、石崎がおそれた以上に、
延長戦をふくめ、試合の後半を大阪が圧倒した。
フィールドの指揮者である遠藤は、
冷徹な頭脳でのこり時間を割り算しつつたたかったろう。
あと十回くらい、右足でけれるかな。
なら、そろそろ前いこか。
無愛想な顔が幾度となく柏ゴールのちかくにあらわれ、
石崎の計画がくるいはじめる。



延長戦前半がおわるまで西野は我慢をつづけ、
後顧のうれいがさった最後の十五分、播戸竜二と倉田秋を投ずる。
すでに勝敗はついたようなもの。
延長後半十一分に、その播戸が得点する。
段どりをととのえたのは、遠藤の右足。
あたりまえのように。
お役御免のヤットは、すぐさま武井択也といれかわり、
風のようにあっけなくきえる。
そのあざやかさ!
精神も肉体もふるわない。
それでも賜杯は手にいれたい。
どうすればよいか。
その難問をとく、現実主義の教本のような一戦。
これはこれでおもしろいし、二〇〇八年をしめくくるにふさわしい。
試合後、めずらしく西野監督が目をあかくはらすのが印象的。
なにもしないことが、もっともこころの重荷になるのだ。
一方、だれよりも無理をしたはずの遠藤だけは、
飄々とインタビュアーにこたえる。
口を半びらきで、ありがとうございますとか、がんばりますとか。
このおとこには、盆も正月も関係ないらしい。


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テーマ : 第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会
ジャンル : スポーツ

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苑田 謙

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