安達正勝『マリー・アントワネット フランス革命と対決した王妃』

28歳ごろの肖像(ヴィジェ・ルブラン作)

 

 

マリー・アントワネット フランス革命と対決した王妃

 

著者:安達正勝

発行:中央公論 2014年

レーベル:中央公論新社

 

 

 

1789年当時、もっとも過激な革命家はマリー・アントワネットだった。

宮廷のしきたりを破壊した。

假面舞踏会・演劇・オペラ・賭博・ファッション……おのれの趣味をつらぬいた。

 

歴史オタクでないかぎり、アントワネット以外の王妃なんてしらない。

もともとフランス宮廷の顔は「公式寵姫」がつとめた。

元高級娼婦のデュ・バリー夫人など、特にえらばれた王の愛人のひとりが、

王妃をはるかにしのぐ権勢をふるい、晩餐会や舞踏会を主催。

ルイ16世には愛人がいないので、アントワネットが両方かねた。

 

スウェーデンの貴公子アクセル・フェルセンと肉体関係があったかは證拠がない。

ただそれが問題になること自体、王妃として例外中の例外。

 

城館にルソー風の庭園をつくり、『フィガロの結婚』を上演した。

ルソーやボーマルシェが反体制的作家なのはかまわず、ひたすら流行をおった。

 

 

女帝マリア・テレジアとその家族

 

 

おっかさんのマリア・テレジアには16人の子がいた。

女帝としての激務のなか、とてもじゃないが末娘の面倒などみられない。

アントワネットは勉強に5分と集中できず、おしゃべりに興じ、宿題は姉にやらせた。

そして無知無学のまま、かつての敵国へとついだ。

 

 

 

 

ルイ16世は名君だった。

世界のうごきをよんでアメリカ独立戦争を援助、海軍改革を断行し、

宗教上の寛容令をだしたり、刑罰の人道主義化をすすめたりした。

 

子をなすまで8年かかり性的不能者よばわりされたが、

アントワネットが初潮をむかえたのが結婚の3か月前であり、無理もない。

ルイ16世は、妻の尻にしかれたフリをする国王だった。

その態度がさらに妻の評判をおとしたのは否定できないが。

 

革命当初のスローガンは「国民、国王、国法!」。

王政廃止をもくろむフランス人はひとりもいない。

それほど王家への愛着はつよく、共和国など想像もできない。

 

ただマリー・アントワネットは、錠前づくりが趣味の夫にまるで無関心だった。

 

 

 

 

名君、かならずしも善政をしかず。

社会の不公正をゆるさない啓蒙思想が、100年かけてヨーロッパに浸透していた。

もはや君主の力で、時流は堰きとめられない。

 

アメリカとの同盟は外交的に正解だが、経済的に愚策だった。

税制改革は貴族に反対される。

そして宮廷費は予算のわづか6%なのに、王妃の浪費癖が槍玉にあげられる。

 

 

ヴェルサイユ行進

 

 

10月5日、武装した8000人の女がヴェルサイユへおしかける。

自分をまもった近衛兵の首が、槍に突き刺されるのを王妃はみた。

 

1791年6月20日深夜、アントワネットの提案で一家は脱走をはかる。

自力じゃ着替えもできないので従者が6人、とんだ大名行列だった。

パリへ連れ戻されたとき、まだ35歳なのに髪は真っ白。

 

 

チュイルリー宮殿の攻防戦

 

 

もはや国王夫妻としては他力本願になるしかない。

戦争がおこれば、民衆はふるえあがるだろうと。

 

だが国民軍は最強のプロイセンすら打ち破る。

ナポレオンの様な野心家が、権力の階段を駆けのぼってゆく。

 

革命政府は本音のところ、王妃を殺したくなかったが、

ハプスブルク家はうつくしき外交カードに見向きもしない。

 

たしかにアントワネットは、敵国の王侯と連絡をとっていた。

要するに、婚家でこまったから実家に泣きついただけだが、

それは明白な国家反逆罪で、フランスはいつまでも庇い立てできない。

 

 

処刑場のルイ16世

 

 

アントワネットは、タンプル塔に幽閉されての生活ではじめて、

夫が決して動じず、家族全員の心をおちつかせる包容力の持ち主としった。

信仰心があつく、最期まで威厳をたもちつづけた。

 

 

あfろ『シロクマと不明局』(まんがタイムKRコミックス)

 

 

世界の歴史を代表する「悲劇のヒロイン」だけど、あきらかに「自業自得」。

 

流行の最先端を驀進するファッションリーダーだったけど、

アンシャン・レジームの象徴としてギロチンの露となる。

 

それでもまばゆい星の様に、後世の関心と羨望を一身にあつめることに、

目立ちたがりのマリー・アントワネットは満足しているだろう。




マリー・アントワネット フランス革命と対決した王妃 (中公新書)マリー・アントワネット フランス革命と対決した王妃 (中公新書)
(2014/09/24)
安達正勝

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