『終身刑を考える』

 

 

終身刑を考える

 

編者:大阪弁護士会死刑廃止検討プロジェクトチーム

発行:日本評論社 2014年

 

 

 

質問。

「日本で、またあなたの地域で、犯罪は増えてると思いますか?」

 

圧倒的に多い回答。

「日本のどこかで増えてるけど、自分の地域では増えてないと思う」

 

われわれは必死に、凶悪犯罪が増えてると信じこもうとしている。

ただ犯罪に関心あるものにとり、殺人件数が一貫して減少しているのは常識。

『トトロ』や『三丁目の夕日』などがえがく「日本人の心がうつくしかった時代」は、

実は家族や隣人が血で血をあらう、「殺人狂時代」だった。

 

 

 

 

「日本人の80%が死刑を支持している」といわれるが、

アンケートの回収率や質問形式などに疑問が呈されている。

 

 

 

 

アメリカの犯罪学会は2012年、「厳罰化に抑止効果はない」と結論をだす。

死刑に関しては、判決から執行まで時間がかかり、そもそも15%しか執行されず、

効果を測定しづらいため、いまのところ「どちらともいえない」とされる。

なお死刑執行は、40年の服役にくらべ3倍の費用がかかることも知っておきたい。

 

刑罰の「逆進性」も重要なテーマ。

経済力やコミュニケーション能力や引受人の有無が、示談にできるかを左右。

たとえ同罪でも、金持ちがお目こぼしにあづかるのは、国際比較でもあきらか。

 

 

 

 

国家を正義へむけ導かねばならない。

 

冤罪の蓋然性はたかい。

アメリカでは死刑判決の1/9が無実と判明している。

 

絞首刑の残虐さは周知されるべき。

首を吊ったところですぐに死なない。

アメリカでは(なんでもアメリカを例にだすのは癪だが、死刑存置がむしろ異常なんでしかたない)

絞首刑がのこっている州はふたつだけだし、薬物をえらぶことができる。

 

終身刑とゆう選択肢をもちこむのも、戦術的に有効だろう。

「終身刑ほど残酷な刑はない」などと、法務省も日弁連も反対している。

じゃあ、そんなに苦痛をあたえるなら、終身刑こそ望ましい刑罰では?

 

法務省はこの手の議論をしたがらない。

論理的に答えようがないから。

「死刑にしたいから死刑にする」、いつだって死刑存置論者のリクツはこれだけ。

 

 

 

 

1999年の「光市母子殺人事件」の加害者のため辯護士21人が結集、

遺族の感情や輿論により、死刑でないはずの事件が死刑になるのを阻止しようとした。

それに対しマスコミは、本来なら「国家vs被告人」の戦いである裁判を、

「遺族vs辯護団」のギスギスした泥仕合として報道する。

辯護士に国民の怒りが集中するのは、麻原彰晃の裁判でもなかったのに!

 

悪意はないにせよ、遺族である本村洋は日本の司法を破壊した。

 

 

『プリパラ』(テレビアニメ/2014-5年)

 

 

広島高裁は判決文で、「被告人が反省してないこと」を延々のべた。

2名殺害とはいえ、事件に計画性がないため、

死刑にするのに悪質さがたりないのは、裁判官が一番わかっている。

そこで「2名殺害+α=死刑」の「α」に「無反省」を代入、

従来の基準の範囲内でどうにか方程式を解いた。

 

事件を大法廷へまわし新基準をたてず、それでも輿論にはいい顔したくて、

広島高裁に汚れ仕事をおしつけた最高裁のズルさは、遺憾にたえない。

 

2012年、日本の裁判は単なるくじ引きとなった。

死刑ガチャだ。

 

 

 

 

あかるい面に目をむけると、本村らによる司法テロがもたらした動揺で、

司法権力の権威がうすれたおかげで、本書が出版されたともいえる。

これまで日弁連は、終身刑を議論することさえゆるさない雰囲気だった。

 

ネブラスカでの判決文を引用する。

 

我々は、死刑囚が罪なき犠牲者に苦痛を与えたのと同じだけ

死刑囚にも与えたいとの誘惑を認識している。

しかし、残虐な行為に対して残虐な行為を行うことなしに罰することが、

その文明の輝かしい証明なのだ。

 

 

『さばげぶっ!』(テレビアニメ/2014年)

 

 

さてオマケに、ボクがいまかんがえる死刑廃止論の想定問答を披露しよう。

 

死刑を廃止すべき理由、それは「自分が死刑にされたくない」から。

あなたは、もし自分や家族や友人に死刑判決がくだされたとして、

それでも死刑制度を支持しますか?

 

……なになに、「本当に悪いことをしたならしかたない」って?

なるほど、ではあなたのかんがえる善悪の基準はなんですか?

まさか裁判所じゃないでしょう。

上記の冤罪率をしっているのだから。

 

えっ、「自分や家族や友人が重罪を犯すはずないから、その質問は無意味」?

そうかな、加害者と被害者はほぼ同数だから、確率はおなじですよ。

「それでもありえない」って?

……うーん、頑固ですね。

まあ「刑罰の逆進性」をかんがえれば、わからなくもないかな。

あなたの属する階級が高ければ、自分や仲間が処罰される蓋然性は低まる。

 

でもじゃあ聞きますけど、自分がよければそれでいいんですか。

金持ちが貧乏人を殺すシステムを放置して、良心は痛まないんですか。

そもそも「自分が上の階級にいる」とゆう認識自体、幻想じゃないですか。

 

社会の残虐さをコントロールすることに、反対する理由はないでしょう。

おっと、「そうゆうオマエは、家族を殺されても死刑をのぞまないのか」って?

あたりまえでしょ、死刑廃止論者をナメないでくださいよ。




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(2014/09/24)
大阪弁護士会死刑廃止検討プロジェクトチーム

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